十年前に行ってきました2
綱吉は向かってきた不良の攻撃をそのまま受け流す。すると不良は自分の勢いで路地裏のゴミ箱へ「ぐげっ」と奇妙な声と共に突っ込んで行った。
だがそれで気を失うこともなく、むしろ一層眼を血走らせ綱吉に向かってくる。
綱吉は息を吐き、一瞬にして相手の懐に入りみぞおち目掛けて思い切りよく肘鉄を食らわした。
イクスグローブを付けている時はまた別だが、通常時の綱吉自身は体重が軽く小柄な為、一発の力が弱いのだ。
その為、接近戦の時には一発で相手を仕留めない限り、自分に危険が及ぶ。
みぞおちの一発が効いたのか不良は起き上がっては来なかった。
綱吉は起き上がってこない事を確認すると、パチパチパチと手を叩く音がした。綱吉は振り向く。
一瞬にして不良を倒した骸が立っていた。
「クフフ、中々に鮮やかなお手並みでしたよ。」
「…そりゃ、ドーモ。……じゃ、オレはこの辺で―。」
「逃がすと思いますか?」
綱吉は心の中でチッと舌打ちする。立ち去ろうとする綱吉の腕をしっかりと骸は掴む。
今の自分なら骸を撒く自信はあるが、結局は自宅へ帰らなければいけないのだ。
家の前で待ち伏せされるに決まっている。
「綱吉君にお兄さんがいるとは聞いていませんが?そのような情報もありませんしね。」
その顔は笑みを浮かべたままだったが、絶対に逃がさないといった雰囲気が漂っていた。
綱吉は大きく溜め息をつき渋々、骸にこれまでの経緯を話した。
「ほう、それは面白…大変ですね。」
「お前、今面白そうって言っただろ!!確かにオレはあんまり困ってないけど、寧ろ十年後に行ったオレが心配なんだよ!」
綱吉は睨むように骸に言った。
しかし、骸は怯むどころか嬉々としている。
(くそぅ!だからコイツには教えたくなかったんだ!!)
「十年後には何か心配事があるのですか?」
「それは…いろいろと…。」
十年後の今頃は骸が任務から帰ってくるのだ。
(十年前のオレが十年後の骸に見つかったら……。過去のオレの貞操が危ない。)
実は綱吉は今回の十年バズーカ誤射での入れ替わりの記憶が無い。
ということは、よく分からないが今回のことはイレギュラー的に発生したのだろう。
お陰で何が起こるか分からない。
それにこれ以上、知り合いに会うと色々と面倒だと思い、骸に家に帰る旨を告げ、踵を自宅へ向ける。
しかし骸は無言で綱吉の後ろを歩いてくる。
始めは同じ方向に用事があるのかと思い、綱吉も何も言わなかったのだが、骸はどこまでも着いてきた。
いい加減、鬱陶しくなった綱吉は歩みを止め聞いた。
「なぁ、なんでお前着いてくるの?」
「先ほどのようなことがないよう、お供いたしますよ。」
胡散臭い笑みを浮かべ骸は言った。
綱吉は迷惑そうな顔をしたが、何も言わずにそのまま歩き出した。
この十年間で学習したのだ。
こういう場合、骸に何を言ってもムダだ、と。
無言の綱吉を見て了解と受け取ったのか、骸は横に並んで歩き出した。
綱吉は大きく溜め息をついたのだった。
◇◇◇
角を曲がればもう直ぐ自宅といったところで声が聞こえた。
「くそう!十代目はどこに行かれたんだ!!はっ、もしかして誘拐とか!」
激しく的外れな勘違いをしている獄寺が、綱吉の家の前で叫んでいた。
それにしても近所迷惑な。
「アレ、綱吉君のところの駄犬に見えますが。」
指差しながら骸がバカにしたように言った。
「あ、あはは。隼人は駄犬じゃないよ。」
一応綱吉は否定はするがその声に力は無かった。
だが、彼をこのままにしておくわけにもいかず、仕方なく声を掛ける。
「隼人、じゃなかった。獄寺君、近所迷惑だから少し落ち着いて。」
いつもの呼びなれた名で獄寺を呼んだが、途中で気が付き訂正した。
当の獄寺は物凄いスピードで綱吉の声に反応し走ってきた。
確かに飼い主を見つけた犬の様だ。目がキラキラしている。ちょっと怖い。
「じゅ、十代目!!ご無事で…した…か?」
そこでようやく綱吉に違和感を覚えたようだ。
目をパチクリさせている。
「あー、ちょっと細かく説明すると長くなるんだけど。
簡単に言うとランボのバズーカーの誤射で十年前のオレと十年後のオレが入れ替わってるんだ。だからオレは十年後の綱吉なんだよ。」
「なっ!十代目があのバカ牛のせいで!分かりました今すぐ始末してきます。
………でもなんで、そいつまでいるんですか。」
綱吉の横に立つ骸を睨みながら獄寺は聞いてきた。
どうやら一から説明が必要なようだ。
綱吉は少しウンザリした。
◇◇◇
家の前で話すのもなんだったので、綱吉は家に二人を招いた。
骸にはもう大丈夫だからと言ったのだが『彼と二人っきりになるのを分かっていて、帰ると思いますか?』とワケの分からない理由で結局、家にまで着いてきたのだ。
一通り話し終えると綱吉は部屋の隅に置いてある十年バズーカーを見た。
二人もつられてそちらを見る。
「お話は分かりました。でもコレが直らないと帰れないんですよね?」
獄寺がどうするんですか?といった感じに聞いてくる。
もしくはこんな時こそ自分が何とかしなければ、と思っているかもしれない。
だが大抵の場合、獄寺が動けば動くほど事態は悪くなる方が多いのだ。
「あ〜、それに関してはこっちで手を打ったから大丈夫だよ。」
獄寺は少し眉を顰め綱吉を見た。
骸もそんな話は聞いていないといった風にちらりとこちらを見る。
「それは一体…。」
獄寺が詳しく聞こうとしたところで玄関のチャイムが鳴る。
「来たようだね。」
綱吉は立ち上がり玄関に向かい客を迎え入れた。
「久しぶり、ジャンニーニ。」
「初めまして、十年後の十代目。何でも十年バズーカーの調子が悪いとか。」
小さなUFOのような乗り物に乗ったジャンニーニが家に入ってきた。
「なっ、てめぇはジャンニーニ!!」
彼に対して余り良い思い出の無い獄寺は叫んだ。
骸は見覚えの無いジャンニーニを一瞥するが特に何も言わなかった。
その間にもジャンニーニは十年バズーカーを手に取り壊れた箇所を確認する。
「ほほう、これなら五分もありましたら直りますよ。」
「本当!良かった。じゃあ頼むよ。」
分かりました。と言ってジャンニーニは部屋を出て行く。
綱吉はニコニコしているが獄寺は苦々しそうだ。
「そういえば獄寺君。なんで今日はウチに誰も居ないの?」
「え?ああ、今日はリボーンさんと姉貴は旅行に出てて、十代目のお母様は御用時で今晩は遅くなるそうです。その為アホ牛たちはアホ女の家に晩飯を食べに行くらしいですよ。」
アホ女とはハルのことだろう。
ランボ達はオレが(十年前の)帰ってきたからハルも学校から帰宅していると思い、ハルの家に向かったのだろう。気の早いことだ。
それにしてもリボーンがいないのは幸いだ。
こんな状況見られたら何を言われるか分からない。
「十代目〜。直りました。」
ノックと共に部屋の扉が開く。
そしてジャンニーニが直したばかりの十年バズーカーを綱吉に差し出した。
「このバズーカーでもう一度撃てば帰れるはずです。」
「ありがとう、ジャンニーニ。それじゃオレはとっとと十年後に帰るよ。獄寺君も骸もありがとう。じゃあね。」
そう言うと綱吉はバズーカーを自分に向け、少し躊躇いながら引き金を引いた。
綱吉は煙の中、何故か骸が少し笑ったような気がしたが帰る今となってはどうでもいいことだと目を瞑った。
やがて煙が薄くなり獄寺と骸の前に見慣れた中学生の綱吉が立っていた。
「十代目〜!!大変でしたね。大丈夫でしたか?」
獄寺が綱吉に話しかけるが返事が無い。
綱吉自身は驚いたように目を丸くし、自分の手を見て何度かグーパーしていた。
そんな綱吉の様子を変だと思ったのか、恐る恐る獄寺は声を掛ける。
「じゅ、十代目?どうかなされましたか?」
そこで始めて綱吉は顔を上げ獄寺の顔を見る。
「隼人…じゃないよね。獄寺君か…。」
「はい?」
呟くように自分の名を呼ばれ獄寺は間抜けな返事をする。
獄寺はやっと気が付いた。
確かに目の前に立っているのは中学生の体格の綱吉なのだが、服装は先ほどまでココに居た十年後の綱吉が来ていた物だ。
「も、もしかして…。」
獄寺はある考えに至った。
綱吉も気が付いたらいい。
そして二人は同時に怒鳴った。
『ジャンニーニ!!!!!』
その様子を骸は実に楽しそうに見ていた。
後書きみたいなもの
良くある話だとは思いますが、書いてみたくなったので書いてみました。
お約束ですね。
でも、アキノはお約束が大好きなのです。
>>3
だがそれで気を失うこともなく、むしろ一層眼を血走らせ綱吉に向かってくる。
綱吉は息を吐き、一瞬にして相手の懐に入りみぞおち目掛けて思い切りよく肘鉄を食らわした。
イクスグローブを付けている時はまた別だが、通常時の綱吉自身は体重が軽く小柄な為、一発の力が弱いのだ。
その為、接近戦の時には一発で相手を仕留めない限り、自分に危険が及ぶ。
みぞおちの一発が効いたのか不良は起き上がっては来なかった。
綱吉は起き上がってこない事を確認すると、パチパチパチと手を叩く音がした。綱吉は振り向く。
一瞬にして不良を倒した骸が立っていた。
「クフフ、中々に鮮やかなお手並みでしたよ。」
「…そりゃ、ドーモ。……じゃ、オレはこの辺で―。」
「逃がすと思いますか?」
綱吉は心の中でチッと舌打ちする。立ち去ろうとする綱吉の腕をしっかりと骸は掴む。
今の自分なら骸を撒く自信はあるが、結局は自宅へ帰らなければいけないのだ。
家の前で待ち伏せされるに決まっている。
「綱吉君にお兄さんがいるとは聞いていませんが?そのような情報もありませんしね。」
その顔は笑みを浮かべたままだったが、絶対に逃がさないといった雰囲気が漂っていた。
綱吉は大きく溜め息をつき渋々、骸にこれまでの経緯を話した。
「ほう、それは面白…大変ですね。」
「お前、今面白そうって言っただろ!!確かにオレはあんまり困ってないけど、寧ろ十年後に行ったオレが心配なんだよ!」
綱吉は睨むように骸に言った。
しかし、骸は怯むどころか嬉々としている。
(くそぅ!だからコイツには教えたくなかったんだ!!)
「十年後には何か心配事があるのですか?」
「それは…いろいろと…。」
十年後の今頃は骸が任務から帰ってくるのだ。
(十年前のオレが十年後の骸に見つかったら……。過去のオレの貞操が危ない。)
実は綱吉は今回の十年バズーカ誤射での入れ替わりの記憶が無い。
ということは、よく分からないが今回のことはイレギュラー的に発生したのだろう。
お陰で何が起こるか分からない。
それにこれ以上、知り合いに会うと色々と面倒だと思い、骸に家に帰る旨を告げ、踵を自宅へ向ける。
しかし骸は無言で綱吉の後ろを歩いてくる。
始めは同じ方向に用事があるのかと思い、綱吉も何も言わなかったのだが、骸はどこまでも着いてきた。
いい加減、鬱陶しくなった綱吉は歩みを止め聞いた。
「なぁ、なんでお前着いてくるの?」
「先ほどのようなことがないよう、お供いたしますよ。」
胡散臭い笑みを浮かべ骸は言った。
綱吉は迷惑そうな顔をしたが、何も言わずにそのまま歩き出した。
この十年間で学習したのだ。
こういう場合、骸に何を言ってもムダだ、と。
無言の綱吉を見て了解と受け取ったのか、骸は横に並んで歩き出した。
綱吉は大きく溜め息をついたのだった。
◇◇◇
角を曲がればもう直ぐ自宅といったところで声が聞こえた。
「くそう!十代目はどこに行かれたんだ!!はっ、もしかして誘拐とか!」
激しく的外れな勘違いをしている獄寺が、綱吉の家の前で叫んでいた。
それにしても近所迷惑な。
「アレ、綱吉君のところの駄犬に見えますが。」
指差しながら骸がバカにしたように言った。
「あ、あはは。隼人は駄犬じゃないよ。」
一応綱吉は否定はするがその声に力は無かった。
だが、彼をこのままにしておくわけにもいかず、仕方なく声を掛ける。
「隼人、じゃなかった。獄寺君、近所迷惑だから少し落ち着いて。」
いつもの呼びなれた名で獄寺を呼んだが、途中で気が付き訂正した。
当の獄寺は物凄いスピードで綱吉の声に反応し走ってきた。
確かに飼い主を見つけた犬の様だ。目がキラキラしている。ちょっと怖い。
「じゅ、十代目!!ご無事で…した…か?」
そこでようやく綱吉に違和感を覚えたようだ。
目をパチクリさせている。
「あー、ちょっと細かく説明すると長くなるんだけど。
簡単に言うとランボのバズーカーの誤射で十年前のオレと十年後のオレが入れ替わってるんだ。だからオレは十年後の綱吉なんだよ。」
「なっ!十代目があのバカ牛のせいで!分かりました今すぐ始末してきます。
………でもなんで、そいつまでいるんですか。」
綱吉の横に立つ骸を睨みながら獄寺は聞いてきた。
どうやら一から説明が必要なようだ。
綱吉は少しウンザリした。
◇◇◇
家の前で話すのもなんだったので、綱吉は家に二人を招いた。
骸にはもう大丈夫だからと言ったのだが『彼と二人っきりになるのを分かっていて、帰ると思いますか?』とワケの分からない理由で結局、家にまで着いてきたのだ。
一通り話し終えると綱吉は部屋の隅に置いてある十年バズーカーを見た。
二人もつられてそちらを見る。
「お話は分かりました。でもコレが直らないと帰れないんですよね?」
獄寺がどうするんですか?といった感じに聞いてくる。
もしくはこんな時こそ自分が何とかしなければ、と思っているかもしれない。
だが大抵の場合、獄寺が動けば動くほど事態は悪くなる方が多いのだ。
「あ〜、それに関してはこっちで手を打ったから大丈夫だよ。」
獄寺は少し眉を顰め綱吉を見た。
骸もそんな話は聞いていないといった風にちらりとこちらを見る。
「それは一体…。」
獄寺が詳しく聞こうとしたところで玄関のチャイムが鳴る。
「来たようだね。」
綱吉は立ち上がり玄関に向かい客を迎え入れた。
「久しぶり、ジャンニーニ。」
「初めまして、十年後の十代目。何でも十年バズーカーの調子が悪いとか。」
小さなUFOのような乗り物に乗ったジャンニーニが家に入ってきた。
「なっ、てめぇはジャンニーニ!!」
彼に対して余り良い思い出の無い獄寺は叫んだ。
骸は見覚えの無いジャンニーニを一瞥するが特に何も言わなかった。
その間にもジャンニーニは十年バズーカーを手に取り壊れた箇所を確認する。
「ほほう、これなら五分もありましたら直りますよ。」
「本当!良かった。じゃあ頼むよ。」
分かりました。と言ってジャンニーニは部屋を出て行く。
綱吉はニコニコしているが獄寺は苦々しそうだ。
「そういえば獄寺君。なんで今日はウチに誰も居ないの?」
「え?ああ、今日はリボーンさんと姉貴は旅行に出てて、十代目のお母様は御用時で今晩は遅くなるそうです。その為アホ牛たちはアホ女の家に晩飯を食べに行くらしいですよ。」
アホ女とはハルのことだろう。
ランボ達はオレが(十年前の)帰ってきたからハルも学校から帰宅していると思い、ハルの家に向かったのだろう。気の早いことだ。
それにしてもリボーンがいないのは幸いだ。
こんな状況見られたら何を言われるか分からない。
「十代目〜。直りました。」
ノックと共に部屋の扉が開く。
そしてジャンニーニが直したばかりの十年バズーカーを綱吉に差し出した。
「このバズーカーでもう一度撃てば帰れるはずです。」
「ありがとう、ジャンニーニ。それじゃオレはとっとと十年後に帰るよ。獄寺君も骸もありがとう。じゃあね。」
そう言うと綱吉はバズーカーを自分に向け、少し躊躇いながら引き金を引いた。
綱吉は煙の中、何故か骸が少し笑ったような気がしたが帰る今となってはどうでもいいことだと目を瞑った。
やがて煙が薄くなり獄寺と骸の前に見慣れた中学生の綱吉が立っていた。
「十代目〜!!大変でしたね。大丈夫でしたか?」
獄寺が綱吉に話しかけるが返事が無い。
綱吉自身は驚いたように目を丸くし、自分の手を見て何度かグーパーしていた。
そんな綱吉の様子を変だと思ったのか、恐る恐る獄寺は声を掛ける。
「じゅ、十代目?どうかなされましたか?」
そこで始めて綱吉は顔を上げ獄寺の顔を見る。
「隼人…じゃないよね。獄寺君か…。」
「はい?」
呟くように自分の名を呼ばれ獄寺は間抜けな返事をする。
獄寺はやっと気が付いた。
確かに目の前に立っているのは中学生の体格の綱吉なのだが、服装は先ほどまでココに居た十年後の綱吉が来ていた物だ。
「も、もしかして…。」
獄寺はある考えに至った。
綱吉も気が付いたらいい。
そして二人は同時に怒鳴った。
『ジャンニーニ!!!!!』
その様子を骸は実に楽しそうに見ていた。
後書きみたいなもの
良くある話だとは思いますが、書いてみたくなったので書いてみました。
お約束ですね。
でも、アキノはお約束が大好きなのです。
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