十年前に行ってきました3
トンッとナイフが壁に刺さる。その壁の前にはジャンニーニがいる。
ジャンニーニはUFOの様な乗り物から降ろされ、壁際に立たされていた。
「あのさ、確かに今の君は腕がまだまだだっていうのを忘れてたオレも悪いと思うよ。 うん。その点は謝るよ。
でもね、オレは直してくれって言ったんだよ。誰も改造しろだなんて言わなかっただろう。
君は言われたことだけやってれば良かったんだ。」
淡々とした口調で言いながら綱吉は手首を動かす。
その姿は十代前半の少年なのだが中身は十年後の綱吉だ。
ジャンニーニが直した十年バズーカーは綱吉を十年後に戻さず、十歳ほど若返らせたらしい。
今度はジャンニーニの耳のすぐ傍を通り壁にナイフが刺さる。
背後の壁には今まで綱吉が投げたナイフが五本刺さっている。
ジャンニーニはピクリとも動こうともしない。いや、動けないでいた。
少しでも動けば殺される。そう本能で感じたジャンニーニは微動だにもできない。汗だけがダラダラと流れていた。
先ほどまで怒っていた獄寺も今の綱吉の雰囲気に気圧されていた。
「じゅ、十代目。もうそれくらいにしてやったら―。」
「獄寺君は黙ってて。」
「―はい…。」
まるで叱られた犬のようになりながら獄寺は黙った。
骸は最初こそ少し驚いていたようだが、今はコトの成り行きを黙って見ている。
「実はオレさ。ナイフの扱いが下手なんだよね。
リボーンにも何度も克服するよう言われたけど、ちょっと昔の嫌な思い出のこともあってね。まだまだ精度が甘いんだよ。」
そう言って更にナイフをジャンニーニに向かって投げる。
ジャンニーニの頬に赤い線が走った。
カッという音と共に壁にナイフが突き刺さった。先ほどよりも投げる速さが上がっている。
「次は当たったらゴメンね。」
表情はにこやかなのに目が全然笑ってない。
ジャンニーニだけでなく獄寺の頬にも嫌な汗が流れる。
「ひぃ〜!も、申し訳ございません。次は必ず直しますので――。」
「いつ直るの?」
「そ、それがまず原因から調べないと。恐らく三日ほど――。」
「明日の夜まで。」
「は?」
綱吉の無理な要求にジャンニーニは固まる。
しかし綱吉はそんなことはお構い無しに更に言った。
「明日の夜までに直して。」
「いや、それはム――。」
「直せ。直らなかったら分かってるよね?」
綱吉は壮絶な笑みを浮かべる。
その笑みに絶大なるカリスマ性を見出す者。または死を予感する者。
味方は士気を高め、敵は死期を悟る。
それは笑みを向けられた者にとって様々な受け方となる。
ボンゴレのボスとしての顔だった。
今のジャンニーニが恐怖しないワケが無い。
「わ、わ、分かりました。必ずや明日の夜までに!!」
それ以外の答えは用意されていなかった。
ジャンニーニは十年バズーカーを持って近くのラボ(リボーンが以前ジャンニーニが来た時に作ったらしい)で直すといって出て行った。
「はぁ〜、明日はどうしよう?」
ジャンニーニを見送った後、溜め息をつきながら綱吉が言った。
(なんかオレ、こっちに来てから溜め息ばかりついてるような…)
溜め息をついても明日は来るのである。
明日は平日だ。学校がある。
「こ、こんな状態でまともに授業なんて受けられませんよ。サボっても誰も怒りません。俺が文句を言わせません。」
確かに別にサボってもいいのだが……。
「いいよ。行くよ学校。…気分転換にもなると思うし。」
ヒバリに会う可能性が高くなるが、うまく凌げるだろう。
何より本当に気分転換をしたい。
「でも、大丈夫ですか?」
「うん、バレない自信はあるから。」
心配そうに気遣う獄寺に綱吉は自信満々に答えた。
獄寺はその言葉を聞き意気込む。
「分かりました!この獄寺隼人、全力をもって十年後の十代目をお守りします!」
獄寺の決心の言葉を聞き綱吉は少し困ったように眉をハの字にした。
そして獄寺の頬を両手で挟み自分へ向ける。
「ダメだよ、獄寺君。君の大切な十代目はオレじゃないでしょ。オレにはオレの獄寺君がいるように、君には君の十代目を大切にしてあげて、ね。」
「あ、…はい。」
獄寺は綱吉の言葉を聞き神妙な面持ちで返事を返した。
しかし急に今の自分の状態を思い出したのか顔を真っ赤にする。
この体勢は嬉しいのだが頬に添えられた手を離して欲しいような。欲しくないような。
獄寺が心の中で自問自答していると骸が不機嫌そうに言った。
「綱吉君、いつまでその状態でいるのですか?」
「あっ!ごめんごめん。」
綱吉自身はまったく気にしていないようで笑いながら手を離した。
これはこれで悲しいものだ。獄寺は心の中で涙する。
◇◇◇
暗くなってきたこともあり、綱吉は獄寺と骸を玄関まで送る。
獄寺は念のため自分の家で泊まった方がいいと言ったが、辞退する。
ハルの家に行ったチビ達が帰ってくるし、綱吉自身見た目は中学生だが中身は子供じゃないのだ。
昔から心配性な獄寺に綱吉は苦笑いした。
それよりも気になることがあった。
骸だ。
この家に着いてからほとんど喋らないこともそうだが…帰り際も特に何を言うでもなし綱吉の家を出て行った。
綱吉は一人になると奈々が作り置きしてあったご飯を温め食べる。
久しぶりに母親の手料理を食べることができ少し幸せに浸る。
その途中で電話が鳴り、仕方なく食事を中断し受話器を取った。
ハルからだ。
どうやらチビ達がご飯を食べた後、寝てしまったので泊まるという。
綱吉は礼を述べ、チビ達をよろしくと言って切ろうとするとハルが『ツナさん、何かあったんですか?』と聞いてきた。
短い綱吉との電話のやり取りで違和感を感じたようだ。
中々に侮れない。
気のせいだと笑って返し、今度こそ受話器を置いた。
やっとご飯を食べ終え、自分の食器を洗う。
そして一息つくと静かに綱吉は言った。
「骸。出てきたら?」
「おや?気配は消したのですが。」
どこからともなく声がした。部屋の空気が動く。
廊下の陰からスゥと骸が出てきた。
その骸をキッと睨むと
「お前、こうなること分かってただろう。」
「心外な。どこにそんな証拠が?」
「お前がここに居るのが証拠だ!」
骸は面白そうに笑った。
「クフフ、僕にもまさか綱吉君が若返るだなんていうことは分かりませんでしたよ。 ただ僕は面白そうでしたので、あのバズーカーの部品を一部外しただけです。それに気が付かなかったあの武器チューナーが悪い。」
「いや、お前が悪いだろ、それ。」
開き直ったともとれる骸の発言に思わず突っ込む。
「それより僕は綱吉君の方が気になりますが。」
「オレの?」
一体、自分が何をしたというのだ?
分からないといった風に骸に目をやる。
「君は始め帰れる事を喜んでいるように見えましたが、帰れないと分かった今でもあまり慌てていませんね。 君は帰りたいのですか?それとも帰りたくないのですか?」
「っ!?」
綱吉は息を呑む。
気付かれるとは思っても見なかった。態度に出したつもりも無かった。
分かるわけがないと高をくくっていたのが悪かったのか、骸をどうやら甘く見ていた。
そうなのだ。たとえ十年前の骸であろうともアノ骸なのだ。
自分の失態に綱吉は思わず天を仰ぐ。
だがすぐに平静を取り戻り艶やかな笑みを浮かべた。
「お前には関係の無いことだ。」
骸は『おやおや』と少し呆れた様に言ったが、それ以上は聞いてこなかった。
「それにしても、随分と精神的に強くなられたようですね。」
「…お前達のお陰でね。」
十年の歳月の重みは伊達ではない。
「そういう骸は、街でオレを見たときに驚いてなかったようだけど。」
「クフ、僕は綱吉君であれば、どんな姿であろうとも愛せる自信がありますから。それに綱吉君に詰られるのもまた、いいものですしね。」
十年経とうとも骸は変わらない。
綱吉は大きく溜め息をつき、今度こそ骸を家から追い出した。
後書きみたいなもの
ヒバツナ話のはずなのにヒバリさんが出てこない…。
次には出てくるはず…です。
>>4
ジャンニーニはUFOの様な乗り物から降ろされ、壁際に立たされていた。
「あのさ、確かに今の君は腕がまだまだだっていうのを忘れてたオレも悪いと思うよ。 うん。その点は謝るよ。
でもね、オレは直してくれって言ったんだよ。誰も改造しろだなんて言わなかっただろう。
君は言われたことだけやってれば良かったんだ。」
淡々とした口調で言いながら綱吉は手首を動かす。
その姿は十代前半の少年なのだが中身は十年後の綱吉だ。
ジャンニーニが直した十年バズーカーは綱吉を十年後に戻さず、十歳ほど若返らせたらしい。
今度はジャンニーニの耳のすぐ傍を通り壁にナイフが刺さる。
背後の壁には今まで綱吉が投げたナイフが五本刺さっている。
ジャンニーニはピクリとも動こうともしない。いや、動けないでいた。
少しでも動けば殺される。そう本能で感じたジャンニーニは微動だにもできない。汗だけがダラダラと流れていた。
先ほどまで怒っていた獄寺も今の綱吉の雰囲気に気圧されていた。
「じゅ、十代目。もうそれくらいにしてやったら―。」
「獄寺君は黙ってて。」
「―はい…。」
まるで叱られた犬のようになりながら獄寺は黙った。
骸は最初こそ少し驚いていたようだが、今はコトの成り行きを黙って見ている。
「実はオレさ。ナイフの扱いが下手なんだよね。
リボーンにも何度も克服するよう言われたけど、ちょっと昔の嫌な思い出のこともあってね。まだまだ精度が甘いんだよ。」
そう言って更にナイフをジャンニーニに向かって投げる。
ジャンニーニの頬に赤い線が走った。
カッという音と共に壁にナイフが突き刺さった。先ほどよりも投げる速さが上がっている。
「次は当たったらゴメンね。」
表情はにこやかなのに目が全然笑ってない。
ジャンニーニだけでなく獄寺の頬にも嫌な汗が流れる。
「ひぃ〜!も、申し訳ございません。次は必ず直しますので――。」
「いつ直るの?」
「そ、それがまず原因から調べないと。恐らく三日ほど――。」
「明日の夜まで。」
「は?」
綱吉の無理な要求にジャンニーニは固まる。
しかし綱吉はそんなことはお構い無しに更に言った。
「明日の夜までに直して。」
「いや、それはム――。」
「直せ。直らなかったら分かってるよね?」
綱吉は壮絶な笑みを浮かべる。
その笑みに絶大なるカリスマ性を見出す者。または死を予感する者。
味方は士気を高め、敵は死期を悟る。
それは笑みを向けられた者にとって様々な受け方となる。
ボンゴレのボスとしての顔だった。
今のジャンニーニが恐怖しないワケが無い。
「わ、わ、分かりました。必ずや明日の夜までに!!」
それ以外の答えは用意されていなかった。
ジャンニーニは十年バズーカーを持って近くのラボ(リボーンが以前ジャンニーニが来た時に作ったらしい)で直すといって出て行った。
「はぁ〜、明日はどうしよう?」
ジャンニーニを見送った後、溜め息をつきながら綱吉が言った。
(なんかオレ、こっちに来てから溜め息ばかりついてるような…)
溜め息をついても明日は来るのである。
明日は平日だ。学校がある。
「こ、こんな状態でまともに授業なんて受けられませんよ。サボっても誰も怒りません。俺が文句を言わせません。」
確かに別にサボってもいいのだが……。
「いいよ。行くよ学校。…気分転換にもなると思うし。」
ヒバリに会う可能性が高くなるが、うまく凌げるだろう。
何より本当に気分転換をしたい。
「でも、大丈夫ですか?」
「うん、バレない自信はあるから。」
心配そうに気遣う獄寺に綱吉は自信満々に答えた。
獄寺はその言葉を聞き意気込む。
「分かりました!この獄寺隼人、全力をもって十年後の十代目をお守りします!」
獄寺の決心の言葉を聞き綱吉は少し困ったように眉をハの字にした。
そして獄寺の頬を両手で挟み自分へ向ける。
「ダメだよ、獄寺君。君の大切な十代目はオレじゃないでしょ。オレにはオレの獄寺君がいるように、君には君の十代目を大切にしてあげて、ね。」
「あ、…はい。」
獄寺は綱吉の言葉を聞き神妙な面持ちで返事を返した。
しかし急に今の自分の状態を思い出したのか顔を真っ赤にする。
この体勢は嬉しいのだが頬に添えられた手を離して欲しいような。欲しくないような。
獄寺が心の中で自問自答していると骸が不機嫌そうに言った。
「綱吉君、いつまでその状態でいるのですか?」
「あっ!ごめんごめん。」
綱吉自身はまったく気にしていないようで笑いながら手を離した。
これはこれで悲しいものだ。獄寺は心の中で涙する。
◇◇◇
暗くなってきたこともあり、綱吉は獄寺と骸を玄関まで送る。
獄寺は念のため自分の家で泊まった方がいいと言ったが、辞退する。
ハルの家に行ったチビ達が帰ってくるし、綱吉自身見た目は中学生だが中身は子供じゃないのだ。
昔から心配性な獄寺に綱吉は苦笑いした。
それよりも気になることがあった。
骸だ。
この家に着いてからほとんど喋らないこともそうだが…帰り際も特に何を言うでもなし綱吉の家を出て行った。
綱吉は一人になると奈々が作り置きしてあったご飯を温め食べる。
久しぶりに母親の手料理を食べることができ少し幸せに浸る。
その途中で電話が鳴り、仕方なく食事を中断し受話器を取った。
ハルからだ。
どうやらチビ達がご飯を食べた後、寝てしまったので泊まるという。
綱吉は礼を述べ、チビ達をよろしくと言って切ろうとするとハルが『ツナさん、何かあったんですか?』と聞いてきた。
短い綱吉との電話のやり取りで違和感を感じたようだ。
中々に侮れない。
気のせいだと笑って返し、今度こそ受話器を置いた。
やっとご飯を食べ終え、自分の食器を洗う。
そして一息つくと静かに綱吉は言った。
「骸。出てきたら?」
「おや?気配は消したのですが。」
どこからともなく声がした。部屋の空気が動く。
廊下の陰からスゥと骸が出てきた。
その骸をキッと睨むと
「お前、こうなること分かってただろう。」
「心外な。どこにそんな証拠が?」
「お前がここに居るのが証拠だ!」
骸は面白そうに笑った。
「クフフ、僕にもまさか綱吉君が若返るだなんていうことは分かりませんでしたよ。 ただ僕は面白そうでしたので、あのバズーカーの部品を一部外しただけです。それに気が付かなかったあの武器チューナーが悪い。」
「いや、お前が悪いだろ、それ。」
開き直ったともとれる骸の発言に思わず突っ込む。
「それより僕は綱吉君の方が気になりますが。」
「オレの?」
一体、自分が何をしたというのだ?
分からないといった風に骸に目をやる。
「君は始め帰れる事を喜んでいるように見えましたが、帰れないと分かった今でもあまり慌てていませんね。 君は帰りたいのですか?それとも帰りたくないのですか?」
「っ!?」
綱吉は息を呑む。
気付かれるとは思っても見なかった。態度に出したつもりも無かった。
分かるわけがないと高をくくっていたのが悪かったのか、骸をどうやら甘く見ていた。
そうなのだ。たとえ十年前の骸であろうともアノ骸なのだ。
自分の失態に綱吉は思わず天を仰ぐ。
だがすぐに平静を取り戻り艶やかな笑みを浮かべた。
「お前には関係の無いことだ。」
骸は『おやおや』と少し呆れた様に言ったが、それ以上は聞いてこなかった。
「それにしても、随分と精神的に強くなられたようですね。」
「…お前達のお陰でね。」
十年の歳月の重みは伊達ではない。
「そういう骸は、街でオレを見たときに驚いてなかったようだけど。」
「クフ、僕は綱吉君であれば、どんな姿であろうとも愛せる自信がありますから。それに綱吉君に詰られるのもまた、いいものですしね。」
十年経とうとも骸は変わらない。
綱吉は大きく溜め息をつき、今度こそ骸を家から追い出した。
後書きみたいなもの
ヒバツナ話のはずなのにヒバリさんが出てこない…。
次には出てくるはず…です。
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