夢名残の空7
恭弥さんが帰ってこない。
こんな事は初めてだった。
しかもリボーンは今回の騒動はオレが関係しているという。
フゥ太の作った「並盛中ケンカの強さランキング」によって下から順番に襲われていると。
こんな事をするワケが分からない。
しかもさっきランキング4位の風紀副委員長の草壁さんが襲われたから次は3位の獄寺君が危ないという。
早く知らせなきゃ!
そう思い綱吉は学校に向かったが獄寺は既に早退した後だった。
公衆電話から彼の携帯電話に掛けてみたがつながらない。
こんな時に限って!そう気持ちが焦る。
すると商店街の方で並中生と黒曜生がケンカをしていたという話を聞いて急いで商店街に向かう。
綱吉が駆けつけると既に決着が着いたのか獄寺は一服していた。
ほっとして獄寺に話しかけると嬉しそうに獄寺が目を輝かせた。
が、すぐに表情が険しくなる。返り討ちにしたはずの黒曜生が消えたという。
確かに獄寺が放ったダイナマイトの煙が上げる場所には誰もいない。
「手間がはぶけた。」
その声のする方へ向くと、獄寺にやられたであろう傷からボタボタと血を垂らしながらこちらへ歩いてくる黒曜生がいた。
その制服はすでにボロボロになっており右半分は血だらけだ。
こちらに歩いては来てはいるが爆発の影響のせいかハッキリと獄寺と綱吉が見える訳ではないようだ。だが暫くしたら見えるようになるであろう。
その前に逃げなければそう思うが綱吉は恐怖の余り固まってしまい動けない。
「気をつけてください。奴の武器はヨーヨーです!!」
そう獄寺に注意されるがやはり怖くて足が動かない。
するとその声によってこちらの位置を把握したのか獄寺の言った黒曜生の武器であろうヨーヨーが飛んでくる。
綱吉は思わず眼を瞑る。が、いつまでたっても痛みはこない。恐る恐る眼を開けると獄寺が自分を庇って攻撃を受けていた。
綱吉は驚愕で眼を見開く。
「10代目…逃げてください。」
獄寺はそう言うと攻撃を受けたであろう場所から血を噴き出しながら気を失い倒れた。
地面に血溜まりができる。
「獄寺君!!獄寺君!!」
綱吉は倒れた獄寺に呼びかけるが反応が帰ってこない。
(オレが、オレが悪いんだ。ごめん獄寺君)
ただオロオロするしかない綱吉に黒曜生が近づいてくる。
その足取りは先ほどとは違い、まっすぐ綱吉へ向かってきた。どうやら目が見えてきたらしい。
すると何故か黒曜生が急に足を止める。そして綱吉を見て驚いたように目を見開いく。
だが綱吉は倒れた獄寺に目をやっているため黒曜生の様子に気が付かない。
「――っ!?綱吉!!」
急に自分の名前を呼ばれた綱吉は傷だらけの黒曜生のほうを見た。
(な、なんでオレの名前知ってるの?)
「並盛中ケンカの強さランキング」にも載っていなかったはずなのに。
綱吉は考えたが目の前の彼に見覚えは無かった。
黒曜生が混乱している綱吉に言った。
「――綱吉。一緒に行こう。骸様も待ってる。」
ム…クロ?
何故かその名前を聞いた瞬間、雷に打たれたような感覚が綱吉を襲った。
(誰?でもオレはムクロという名前を知ってる?……あ〜もう訳が分からない。)
ムクロの名前は気になるが綱吉は首を左右にブンブンとふり混乱した気持ちを静める。
今は獄寺の怪我のほうが心配だ。
「な…に…言ってるの?急に一緒に行こうなんて言われても分かんないよ!」
そう言うと獄寺の傷口を押さえるモノが無いか探す。
すると黒曜生は獄寺がいるせいで綱吉が一緒に来ないと考えたのか獄寺に止めをさそうと動く。
それに気が付いた綱吉はとっさに止めようと前に出た。
(今度こそあたる!!)
そう思った瞬間、キンと澄んだ音が聞こえた。
綱吉は何事か目の前を見ると山本の背中が見えた。
「山本ぉ!」
山本が綱吉の前にでてヨーヨーを山本のバットで切ったのだ。
(つーかいつから山本のバット常備〜!?)
どうやら山本も並中生が商店街でケンカをしているという噂でここまで来たようだ。
その後黒曜生はやってきた警察官の姿を遠くに確認しながら山本を見て
「お前は犬の獲物…もめるのめんどい………」
と呟いた。最後にちらりと綱吉のほうを見たが何も言わずに立ち去った。
それを確認し山本は綱吉のほうを向く。
「大丈夫だったか、ツナ?」
「え、あ、うん。オレよりも獄寺君が!早く運ばなきゃ。」
「確かに。オイ、しっかりしろ!獄寺!!」
山本は獄寺を肩に担ぎ歩き出す。
綱吉は黒曜生が歩いていった方を見る。
不安、恐怖、困惑そういったものが、ない交ぜになったような奇妙な感じがした。
そしてその中に綱吉自身も気づかない程のほんの少しだけ喜びと呼べるものがあった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
獄寺は一度病院に運ばれたがリボーンが病院は危険だからという理由で並中の保健室に運んだ。命には別状はないらしい。
獄寺のベットの横で山本とビアンキとシャマルがやり取りをしていたが綱吉はそっと保健室を出る。
(獄寺君、よかった。)
そう綱吉は思うが同時に何故あの場に行ってしまったのだろうと後悔する。
恭弥さんは帰ってこない。獄寺君は自分のせいで大怪我を負うし、それに…。
落ち込む綱吉の前にリボーンが立っていた。
どうやらイタリアでおきた集団脱獄と今回の騒動との関係を探っていたらしい。
そして綱吉に語った。今回の騒動は六道骸とその仲間による仕業だと。
彼らはマフィアを追放されたものたちで、どうやらボンゴレ10代目を探しているらしいということ。
さらにボンゴレ9代目からの勅命により彼らを12時間以内に捕獲しなければならないと。
綱吉は固まった。9代目の勅命云々ではなく『六道 骸』という名に。
「なんだ?どうかしたのか?」
そんな綱吉の様子を見てリボーンは聞いた。
綱吉は俯き微かな声で答える。
「オレ、その六道骸を知ってるかもしれない。」
リボーンはいつもの無表情なまま聞いていた。
「さっき獄寺君を襲った黒曜生がオレのこと知ってたんだ。ボンゴレじゃなくて綱吉って呼んだんだ。」
「そいつは骸だったのか?」
「…違うと思う。その黒曜生が骸の事を骸様って呼んでたし、なんとなくだけどオレは彼は骸じゃないって思ったんだ。」
「ふ〜ん、どうやら向こうはツナのことは知っていて、ボンゴレ10代目を探しているがボンゴレとツナが同一人物だとは思っていなかった。そういうことか。」
「…オレは10代目なんかにならないけど多分そういうこなんだと思う。」
「で、おめぇはその骸とどこで知り合ったんだ?」
リボーンの質問に綱吉は思わず言葉を詰まらせた。
「…わからねぇんだな。」
リボーンの言葉に小さく頷く。
「つーことはツナが6歳から10歳の間に会った可能性が高いか。」
リボーンは綱吉の家庭教師に来た時から綱吉の記憶喪失のことを知っていた。
6歳から10歳、それは綱吉の記憶が曖昧な期間。
曖昧だからこそ怖いこともある。自分がその間、どこに居たのか。誰に会ったのか。
そして何をしたのか。
綱吉は思い出したいとも思っていたが、同時に思い出す事を心のどこかで拒否していた。
思い出すことによって何かを失ってしまうかもしれない恐怖。
綱吉の中にはずっとその恐怖があったのだ。
でも
「オレ、その六道骸に会いに行くよ。今回の騒動はオレを探す為にみんなが襲われたんだし。それに恭…ヒバリさんも帰ってこないし、もしかしたらその骸のところにいるかもしれないから。オレには何の力もないから倒せるとは思わないけど、でも行かなきゃ行けないと思うんだ。」
「オレも連れて行ってください。今度はメガネヤローの息の根を止めますんで!!」
その声に振り向くと保健室のベットで寝ていたはずの獄寺が立っていた。
「オレも行くぜツナ!学校対抗のマフィアごっこだって?」
(また何か勘違いしてるし〜!)
山本が獄寺の後ろから出てきて言った。
「私もいくわ!隼人が心配だもの。」
さらにビアンキが出てきたが次の瞬間、獄寺がほげぇ〜と叫びながら倒れた。
(逆効果―!!)
「み、みんないつから聞いてたの?」
その問いには山本が答えた。
「う〜ん、ツナが六道ってやつのとこに乗り込むって話のとこかな。その六道が今回の騒動の主犯なんだろ?」
綱吉は、ほっとした。どうやら最後の方しか聞いていなかったらしい。
何故か彼らにはもしかしたら自分と骸が知り合いだと今は知って欲しく無かった。
「それじゃあ30分後にツナの家に集合な。早くしねぇと向こうには人質がいるしな。」
「人質?」
「おめぇたちのよく知る人質がな。」
リボーンはそれ以上教えてくれなかった。
そして準備の終わった綱吉たちは一路、敵地へ向う。
――――――――黒曜センターへ
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
千種が目を覚ますとひび割れた天井が見えた。
ムクッと起き上がると骸が目の前のソファーに座っていた。
「おや目を覚ましましたか?3位狩りは大変だったようですね、千種。」
ずれたメガネを直しながら千種は答えた。
「ボンゴレのボスと接触しました。」
「そのようですね。彼ら、遊びにきてますよ。犬がやられました。」
すると千種は驚きと同時に納得したような表情をする。
「…やはり。」
「やはり?」
千種の言葉に疑問符をつけ骸が返す。
「恐らく犬がやられたのもボンゴレのボスに気が付いたからだと。」
千種は出来るだけ平静を装い骸に告げる。
「…ボンゴレのボスは……綱吉です。」
骸が目を丸くし珍しく固まる。
「綱吉君が…ボンゴレ?……クフ、クフフフ、クハハハハハハハハハハハハハハハハ――」
狂ったように笑い出す骸を千種は静かに見ていた。
「そうですか、綱吉君がねぇ。まぁマフィア関係だとは思っていましたがよりによってボンゴレとは。なるほど流石はイタリア随一の勢力を誇るボンゴレです。通りでいくら調べても素性はもとよりその行方も追えなかったという訳ですか!」
「骸様。どういたしますか?」
「どうする?決まってますよ。もちろん綱吉君を迎えに行きます。マフィアになんてましてやボンゴレに綱吉君は渡しませんよ!彼は僕のものです。」
骸は言葉に怒気を含め言いきった。
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