夢名残の空5
「サワダツナヨシという名に覚えはありませんか?」
青年は崩れ落ちた男の頭を踏みつけながら問うた。
路地裏の為、問う者の姿はハッキリとは判らないが良く通る声だった。
頭を踏みつけられた男は、助かりたい一心でヒューヒューと荒い息をする喉から「知っている。」と声を出そうとしたが 「ああ、別に嘘を言っても構いませんが、それが嘘だと分かった時はどうなるかは………分かるでしょう?」
そう先に言われ男は黙った。
「ふむ、どうやら知らないようですね。では用はありません。」
言い終わると同時に青年は踏みつけていた男の頭を蹴り上げた。そして男は動かなくなる。
「どうもこの国の人間は平和ボケしているのか喧嘩を売る相手すら見極められないみたいですね。」
そう言うとサッと後ろを向き歩き出す。
すると青年の前に何処からともなくメガネを掛け頭に帽子を被った青年が現れ問う。
「骸様。どうでしたか?」
「ダメですね。さっぱりですよ。せっかく日本なら何か彼の情報があるかと思ったんですがね。千種の方もその様子だと収穫は無かったようですね。恐らく犬も。」
「申し訳ございません。犬もすぐに帰ってくるとは思います。しかしツナヨシの情報はありませんが、ボンゴレ10代目の件で情報が。」
「ほう、ボンゴレの居場所でも分かりましたか?」
「はい、どうやらボンゴレの傍にランキングフゥ太がいるとのことです。そしてフゥ太の目撃情報が並盛町にてありました。」
骸と呼ばれた青年は意外そうに片眉をピクリと動かす。
「あの何処にいるか分からないというランキングフゥ太がねぇ。どうやらボンゴレ10代目は人望があるようだ。」
「遅くなってごめんなさいれす。」
そこに茶色い髪を幾つもの髪留めで留めた青年が合流する。
「さて、犬も帰ってきたようですし行きますか。」
「並盛にですか?」
千種は問うた。が骸は否定する。
「いいえ。まずは並盛の隣町、黒曜です。そこで情報を再度集めます。ツナヨシ君のことは一先ず置いておきましょう。十代目の略奪後、ボンゴレの情報網を使って探したほうが早そうですし。クフフ、どうやら面白くなりそうですね。」
そう言うと骸ら3人は路地裏から出て表通りへと歩き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「転校生に黒曜中の不良がしめられた?」
最近のヒバリは大変機嫌が良かった。傍目にはそう見えないが。
綱吉がヒバリの事を思い出してから約一年、綱吉とは表立って会えないがこれまで彼が居なかったとに比べればなんてことなかった。
一緒に桜を見に行こうと約束したのに、あの変態ヤブ医者に「桜クラ病」という妙な病気をかけられ結局行けずじまいになったりもしたが綱吉が傍にいるのが嬉しかった。
だから草壁からの黒曜の異変を聞き今までとは打って変わって機嫌が悪くなる。
一昔前の不良のようにリーゼント、口には草を咥えた風紀委員の副委員長である草壁が続ける。
「はい、約一週間前に黒曜に転校してきた者達が次々と黒曜の不良をしめ、今ではその者達が黒曜を仕切っているとの情報です。」
「そいつらの名前は?」
ヒバリはそう聞くと草壁は困ったように答えた。
「それが…分かりません。どうやら帰国子女らしいのですが、どこの国から来たのかも定かではありません。複数いるようですが人数もはっきりとは…。黒曜中の者はその転校生の下に付くか、若しくはしめられ病院送りにされています。一応病院送りにされた者にも話を聞きに行ったのですが…その、正気を保っておらず分からずじまいです。」 「要はそいつらについては何も分からないんだね。…他に情報は?」
余り面白くなさそうにヒバリは呟く。
「あと黒曜では無いのですが、黒曜の異変の少し前に別の街で同じように何人もの不良がしめられる事件があったようで、そこでは死者が一名でております。」
「へぇ、死者が?被害者の情報はあるの?」
驚いた風でもなくヒバリは聞いた。
草壁はヒバリに淡々と報告する。
「被害者の名前は「きょうや かず」。京都の「京」に「谷」、「一」と書いて「かず」と読み「京谷 一」です。年は17歳。素行は余り良くはありませんが裏と繋がっていたという形跡はありません。せいぜい夜中に仲間とつるんでいたぐらいだそうです。」
ヒバリはそこまで聞き不快そうにした。ヒバリはどうも群れるという行動を理解できない。
草壁は続けたる。
「その当日も仲間と集まりたむろしていたそうですが、そこに見知らぬ男が現れ幾つか質問してきたらしいです。が被害者達は質問に答えるどころか、自分達に声を掛けたそのバカな男をしめようとし―。」
「反対にしめられた…か。」
ヒバリは少し考え聞く。
「ふ〜ん、…何で1人だけ殺されたの?」
もし、犯人が黒曜の転校生と同じなら手際が悪すぎる。殺人はリスクが高い。たまたま打ち所が悪く殺してしまったなんていうことではないはずだ。
「何故、1人だけ殺されたのかはわかりませんが、運悪く死んだわけではないようです。」
ヒバリの疑問は草壁の言葉によって肯定された。
草壁がその理由を述べる。
「実は殺害方法が異常でして。」
「異常?」
ヒバリは眉を顰める。
「はい。死体の状況は片目を潰されており、両足の腱は切断。両手両足の爪は全て剥ぎ取られ関節もほぼ外されておりました。全身複雑骨折の上、顎の骨も砕かれており背中から肺のあたりを刺され十数分息がまともにできず苦しんで死んだと思われます。致命傷は肺への刺し傷、肺の中に溜まった血液による窒息死です。」
確かに異常だった。
「同時に被害にあった他の者はせいぜい骨折と打撲。病院送りでしたがこちらは黒曜と違って意識はハッキリしておりましたので話を聞きに行ったのですが、彼らも何故、彼が殺されたのかは分からないようでした。」
どうして彼が殺されたかは分からない。が、その殺され方には明確な殺意が見える。
ヒバリは何故か黒曜の転校生と京谷殺害の犯人は同一人物だと確信する。
ただのカンだがヒバリはこういうときの自分のカンを信じていた。
「もし、その黒曜生が並盛に害を与えるようだったら容赦なく叩きのめせ。そう通達しておいて。」
この並盛に手を出すようであれば誰だろうが容赦はしない。
ヒバリは自分のモノを他人に手を出されて黙っているようなかわいい性格ではない。
「はい、分かりました。…それと――。」
「何?まだあるの。」
そろそろ綱吉が応接室に来る時間なのでさっさと終わらせたかったヒバリはあからさまに機嫌悪く草壁に言った。
少し草壁は怯んだが流石は風紀委員の副委員長、ヒバリ下で働いているだけあってなんとか続ける。
「実は京谷殺害の犯人ですが、始めに犯人のほうから声を掛けてきたのですが―。」
「ああ、そういえば犯人から質問してきたって言ってたね。」
「その質問の内容なんですが……。」
「なに、早く言ってくれる。」
じゃないと綱吉が来てしまう。綱吉には応接室に来るときには誰もいないようにしておくと約束してあるのだ。
そんなヒバリの様子に草壁は気が付かない。
「誰かを探しているようだったと。」
「誰かを探している?」
ヒバリが復唱するように聞く。
「ええ、その時にサダだかツヨだかそんな名前を聞かれたそうなんですが、ハッキリと覚えている者はいませんでした。」
「…わかった。とりあえず草壁は黒曜の動向を探っておいて。」
草壁はそれを聞きサッと素早く一礼し応接室を後にした。
自分以外誰も居なくなった応接室でヒバリは考える。
誰かを探していた?犯人が黒曜に来たというのは探し人が黒曜にいたのか?
どうも釈然としない。
そこでトントン、「ヒバリさんいてますか?」とノックと共に愛しいヒトの声が聞こえた。
ヒバリは自然と笑みを作り答えた。
「入りなよ。」
すると綱吉はカバンを持って入ってくるなりヒバリを見て眉をハの字にする。
「恭弥さん何かあったんですか?」
ヒバリとの約束を守り綱吉は2人の時には恭弥さんと呼んでいる。
ヒバリは何かあったのかと聞かれ少し驚き「なんで?」と聞き返した。
「だっていつもより恭弥さんの周りの空気がピリピリしてるというか、何となくなんですけどね。」
本当にこの子には時々驚かされる。そうヒバリは思う。草壁だって気づきはしなかっただろう。
「ああ、綱吉が気にする程のことでもないよ。」
綱吉は納得いかないと言った感じだったが、何もそのことについては言ってこなかった。
今日は金曜日だからこの土日は綱吉に会えないのになんとも気まずくなる。
ヒバリは綱吉が自分の事を気にかけてくれるのは嬉しいが、今回のような釈然としないことに対して綱吉に心配されるのは遠慮したかった。
長引くようならさっさと片付けてしまおう。そうヒバリは思う。
しかしその思いも空しく黒曜の並盛生への襲撃が始まった。
>>6
青年は崩れ落ちた男の頭を踏みつけながら問うた。
路地裏の為、問う者の姿はハッキリとは判らないが良く通る声だった。
頭を踏みつけられた男は、助かりたい一心でヒューヒューと荒い息をする喉から「知っている。」と声を出そうとしたが 「ああ、別に嘘を言っても構いませんが、それが嘘だと分かった時はどうなるかは………分かるでしょう?」
そう先に言われ男は黙った。
「ふむ、どうやら知らないようですね。では用はありません。」
言い終わると同時に青年は踏みつけていた男の頭を蹴り上げた。そして男は動かなくなる。
「どうもこの国の人間は平和ボケしているのか喧嘩を売る相手すら見極められないみたいですね。」
そう言うとサッと後ろを向き歩き出す。
すると青年の前に何処からともなくメガネを掛け頭に帽子を被った青年が現れ問う。
「骸様。どうでしたか?」
「ダメですね。さっぱりですよ。せっかく日本なら何か彼の情報があるかと思ったんですがね。千種の方もその様子だと収穫は無かったようですね。恐らく犬も。」
「申し訳ございません。犬もすぐに帰ってくるとは思います。しかしツナヨシの情報はありませんが、ボンゴレ10代目の件で情報が。」
「ほう、ボンゴレの居場所でも分かりましたか?」
「はい、どうやらボンゴレの傍にランキングフゥ太がいるとのことです。そしてフゥ太の目撃情報が並盛町にてありました。」
骸と呼ばれた青年は意外そうに片眉をピクリと動かす。
「あの何処にいるか分からないというランキングフゥ太がねぇ。どうやらボンゴレ10代目は人望があるようだ。」
「遅くなってごめんなさいれす。」
そこに茶色い髪を幾つもの髪留めで留めた青年が合流する。
「さて、犬も帰ってきたようですし行きますか。」
「並盛にですか?」
千種は問うた。が骸は否定する。
「いいえ。まずは並盛の隣町、黒曜です。そこで情報を再度集めます。ツナヨシ君のことは一先ず置いておきましょう。十代目の略奪後、ボンゴレの情報網を使って探したほうが早そうですし。クフフ、どうやら面白くなりそうですね。」
そう言うと骸ら3人は路地裏から出て表通りへと歩き出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「転校生に黒曜中の不良がしめられた?」
最近のヒバリは大変機嫌が良かった。傍目にはそう見えないが。
綱吉がヒバリの事を思い出してから約一年、綱吉とは表立って会えないがこれまで彼が居なかったとに比べればなんてことなかった。
一緒に桜を見に行こうと約束したのに、あの変態ヤブ医者に「桜クラ病」という妙な病気をかけられ結局行けずじまいになったりもしたが綱吉が傍にいるのが嬉しかった。
だから草壁からの黒曜の異変を聞き今までとは打って変わって機嫌が悪くなる。
一昔前の不良のようにリーゼント、口には草を咥えた風紀委員の副委員長である草壁が続ける。
「はい、約一週間前に黒曜に転校してきた者達が次々と黒曜の不良をしめ、今ではその者達が黒曜を仕切っているとの情報です。」
「そいつらの名前は?」
ヒバリはそう聞くと草壁は困ったように答えた。
「それが…分かりません。どうやら帰国子女らしいのですが、どこの国から来たのかも定かではありません。複数いるようですが人数もはっきりとは…。黒曜中の者はその転校生の下に付くか、若しくはしめられ病院送りにされています。一応病院送りにされた者にも話を聞きに行ったのですが…その、正気を保っておらず分からずじまいです。」 「要はそいつらについては何も分からないんだね。…他に情報は?」
余り面白くなさそうにヒバリは呟く。
「あと黒曜では無いのですが、黒曜の異変の少し前に別の街で同じように何人もの不良がしめられる事件があったようで、そこでは死者が一名でております。」
「へぇ、死者が?被害者の情報はあるの?」
驚いた風でもなくヒバリは聞いた。
草壁はヒバリに淡々と報告する。
「被害者の名前は「きょうや かず」。京都の「京」に「谷」、「一」と書いて「かず」と読み「京谷 一」です。年は17歳。素行は余り良くはありませんが裏と繋がっていたという形跡はありません。せいぜい夜中に仲間とつるんでいたぐらいだそうです。」
ヒバリはそこまで聞き不快そうにした。ヒバリはどうも群れるという行動を理解できない。
草壁は続けたる。
「その当日も仲間と集まりたむろしていたそうですが、そこに見知らぬ男が現れ幾つか質問してきたらしいです。が被害者達は質問に答えるどころか、自分達に声を掛けたそのバカな男をしめようとし―。」
「反対にしめられた…か。」
ヒバリは少し考え聞く。
「ふ〜ん、…何で1人だけ殺されたの?」
もし、犯人が黒曜の転校生と同じなら手際が悪すぎる。殺人はリスクが高い。たまたま打ち所が悪く殺してしまったなんていうことではないはずだ。
「何故、1人だけ殺されたのかはわかりませんが、運悪く死んだわけではないようです。」
ヒバリの疑問は草壁の言葉によって肯定された。
草壁がその理由を述べる。
「実は殺害方法が異常でして。」
「異常?」
ヒバリは眉を顰める。
「はい。死体の状況は片目を潰されており、両足の腱は切断。両手両足の爪は全て剥ぎ取られ関節もほぼ外されておりました。全身複雑骨折の上、顎の骨も砕かれており背中から肺のあたりを刺され十数分息がまともにできず苦しんで死んだと思われます。致命傷は肺への刺し傷、肺の中に溜まった血液による窒息死です。」
確かに異常だった。
「同時に被害にあった他の者はせいぜい骨折と打撲。病院送りでしたがこちらは黒曜と違って意識はハッキリしておりましたので話を聞きに行ったのですが、彼らも何故、彼が殺されたのかは分からないようでした。」
どうして彼が殺されたかは分からない。が、その殺され方には明確な殺意が見える。
ヒバリは何故か黒曜の転校生と京谷殺害の犯人は同一人物だと確信する。
ただのカンだがヒバリはこういうときの自分のカンを信じていた。
「もし、その黒曜生が並盛に害を与えるようだったら容赦なく叩きのめせ。そう通達しておいて。」
この並盛に手を出すようであれば誰だろうが容赦はしない。
ヒバリは自分のモノを他人に手を出されて黙っているようなかわいい性格ではない。
「はい、分かりました。…それと――。」
「何?まだあるの。」
そろそろ綱吉が応接室に来る時間なのでさっさと終わらせたかったヒバリはあからさまに機嫌悪く草壁に言った。
少し草壁は怯んだが流石は風紀委員の副委員長、ヒバリ下で働いているだけあってなんとか続ける。
「実は京谷殺害の犯人ですが、始めに犯人のほうから声を掛けてきたのですが―。」
「ああ、そういえば犯人から質問してきたって言ってたね。」
「その質問の内容なんですが……。」
「なに、早く言ってくれる。」
じゃないと綱吉が来てしまう。綱吉には応接室に来るときには誰もいないようにしておくと約束してあるのだ。
そんなヒバリの様子に草壁は気が付かない。
「誰かを探しているようだったと。」
「誰かを探している?」
ヒバリが復唱するように聞く。
「ええ、その時にサダだかツヨだかそんな名前を聞かれたそうなんですが、ハッキリと覚えている者はいませんでした。」
「…わかった。とりあえず草壁は黒曜の動向を探っておいて。」
草壁はそれを聞きサッと素早く一礼し応接室を後にした。
自分以外誰も居なくなった応接室でヒバリは考える。
誰かを探していた?犯人が黒曜に来たというのは探し人が黒曜にいたのか?
どうも釈然としない。
そこでトントン、「ヒバリさんいてますか?」とノックと共に愛しいヒトの声が聞こえた。
ヒバリは自然と笑みを作り答えた。
「入りなよ。」
すると綱吉はカバンを持って入ってくるなりヒバリを見て眉をハの字にする。
「恭弥さん何かあったんですか?」
ヒバリとの約束を守り綱吉は2人の時には恭弥さんと呼んでいる。
ヒバリは何かあったのかと聞かれ少し驚き「なんで?」と聞き返した。
「だっていつもより恭弥さんの周りの空気がピリピリしてるというか、何となくなんですけどね。」
本当にこの子には時々驚かされる。そうヒバリは思う。草壁だって気づきはしなかっただろう。
「ああ、綱吉が気にする程のことでもないよ。」
綱吉は納得いかないと言った感じだったが、何もそのことについては言ってこなかった。
今日は金曜日だからこの土日は綱吉に会えないのになんとも気まずくなる。
ヒバリは綱吉が自分の事を気にかけてくれるのは嬉しいが、今回のような釈然としないことに対して綱吉に心配されるのは遠慮したかった。
長引くようならさっさと片付けてしまおう。そうヒバリは思う。
しかしその思いも空しく黒曜の並盛生への襲撃が始まった。
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