夢名残の空10


彼とのことをまず最初に思い出すのは桜。
いつも呆れたような顔をしつつも自分と一緒にいてくれた人。
一緒にいてくれるのが当たり前になっていて逢えなくなったときに初めて気が付いた。
どれだけ彼が大切な人だったのかと。
だからこそ今思う。―――嫌われたくない。でも――もう思い出してしまったから。


綱吉は目をうっすらと開く。
頭がズキズキと痛み、少し気分が悪かった。
頬に冷たい感触がある。
どうやら泣いていたらしい。
だんだんとハッキリしてきた目に映ったのは見覚えの無い天井と一羽の小鳥だった。
驚いて体を起こそうとすると余りの激痛にそのままベットに沈み込む。
骸戦で使用した小言弾による筋肉痛だ。
「…君、何してるの?」
声のほうを向くとヒバリが呆れたようにベットの横に座っていた。
綱吉は目線だけでヒバリを見る。
「それ筋肉痛らしいね。激痛で気を失うほどの筋肉痛って日頃からよっぽど運動してないからじゃないの?なんならいつでも鍛えてあげるけど。」
ヒバリの今の状態は見た目にも包帯があちらこちらに見え隠れしており、如何にも大怪我です。といわんばかりの状態なのだが、一方綱吉は筋肉痛のみといった状態。見た目にはただベットで寝てるだけだ。
「…イエ、エンリョシマス。」
ハッキリ言って大怪我をしている人から鍛えてあげるといわれるのは今の綱吉の状態から見て恥かしい。見た目だけは軽傷なのだから。
「恭弥さん。怪我、大丈夫なんですか?」
綱吉が心配して聞くと、どうやら禁句だったらしくヒバリの機嫌が急激に悪くなる。
「何か言ったかい?綱吉。」
にっこりと微笑みどす黒いオーラを発しながらヒバリは聞き返してくる。
「ナンデモアリマセン。」
綱吉は悟った。聞いてはいけないと。
するとそこに先ほどの小鳥が綱吉の上に乗ってきた。
しかも並盛中の校歌を歌いだす。
「きょ、恭弥さん!!この鳥ってまさか!?」
「ああ、黒曜センターのところから何故かついてきたんだよ。」
「ついてきたって…。」
そもそもこの鳥は敵のペット?だったんじゃあ。
思わず綱吉は呆然とした。
そして疑問が
「…あの、恭弥さんがこの鳥に並中の校歌を覚えさせたんですか?」
「僕以外に誰がいるの?」
…そうですか、覚えさせたんですか。恭弥さんが。
綱吉は遠い目をした。
「どうやら、それ綱吉の事を気にいったらしいね。」
ヒバリの言うとおり鳥は綱吉の上をトントンと跳ねながら遊んでいるようにも見えた。
最終的には綱吉の頭の上が気にいったらしく、そこで座り込む。
(オレの頭ってもしかして巣材ですか!!)
1人オロオロとする――実際は動けないが――綱吉を見てヒバリが小さく笑う。
それを見て綱吉も笑おうとするがうまくいかなかった。
クニャリと顔を歪め泣きそうな顔をする。
「あの…オレ、恭弥さんに…言わなきゃいけないことが。」
泣きそうな口調にヒバリは何かに気付き立ち上がった。綱吉の頭にいた小鳥がヒバリの肩へ飛び移る。
「聞いてあげるよ。でもそれは君が言いたくなったら僕のところまでおいで。それまで待っててあげるから。」
そう言うと綱吉の頭を撫でて扉を開け出て行った。
綱吉は自分以外居なくなった部屋で静かに涙した。
ヒバリの優しさに。自分の弱さに。彼を失いたくないという思いに。
さっきも言わなきゃいけないと思ったのに躊躇った。
そしてヒバリはそんな綱吉の躊躇いに気が付いた。だから綱吉が決心するまで猶予をくれたのだ。
自分の不甲斐なさに暫くの間、涙が止まらなかった。
するとノックも無しにリボーンが入ってきた。
綱吉は急いで涙を拭うが目が真っ赤になっていたので泣いていたのは丸分かりだった。
「今まで散々オメーの泣いた情けない顔を何度見てきたと思うんだ。今更、泣き顔を見られたって一緒だろうが。」
リボーンの容赦ない言葉をかけてきた。
でも、恥かしいものは恥かしいのだ。
綱吉はかろうじて動く腕で布団を顔の辺りまで覆った。
リボーンは一つ溜め息を付くとそれに関しては何も言ってこなかった。
そしてベットの横にあった椅子に飛び乗った。
「あと二、三日したら退院できるらしいぞ。まぁ筋肉痛はさらに一週間ぐらいは残るだろうが動けないほどじゃねぇはずだ。」
「…?…あれ?リボーン、二週間ぐらいは筋肉痛だって言ってなかった?」
布団の中から言ったため綱吉の声は少しくぐもっていた。
「…ヒバリから何も聞いていないのか?」
「え?ヒバリさんとはチョット話しただけだけど。聞くって何を?」
「今日は骸を倒して四日経ってる。オメーは黒曜センターで倒れてすぐ高熱が出て、一時は昏睡状態だったが熱は二日ほどで引いたんで集中治療室から一般病棟…個室に移ったんだぞ。」
リボーンは椅子の上に立ったまま言った。
「なにそれ!?」
綱吉は驚いて布団から顔を出す。リボーンと目が合う。
「なにそれじゃねえぞ。獄寺や山本、ビアンキもヒバリ同様重傷だったが、すぐに意識を取り戻したしな。ある意味オメーが一番重体だったんだぞ。皆に心配もかけたしな。ママンも心配してたぞ。」
「…それで今、みんなは?」
沈んだ声で綱吉は聞いた。
「山本は既に退院したが獄寺、ビアンキ、フゥ太、ヒバリはまだ入院中だ。オメーは大事を取ってあと二、三日は検査入院だぞ。」
「…そう。」
小さく綱吉が応える。
リボーンが椅子から綱吉が寝るベットに飛び乗った。
丁度綱吉を見下ろすような形になる。
「…今回の高熱の原因は……急激な精神的負荷によるものらしい。」
「――っ!」
リボーンの言葉に息を呑む。
「オメー、記憶が戻ってるな。」
綱吉は小さく溜め息を付いた。そしてリボーンから視線を外し言った。
「うん、思い出したよ。」
「そうか。」
それ以上は何も聞いてこなかった。
何だかんだ言ってリボーンもヒバリも優しいのだ。
いつか2人には話さなくてはいけない。でも今は先にやることがある。
「リボーン、お願いがあるんだけど。」
「…何だ。」
「退院してからでいいから、九代目に連絡を取りたいんだ。」
綱吉のその言葉を聞きリボーンは眉根を寄せた。
いつも無表情の彼には珍しいことだ。
「………わかった。でも退院するまでもう一度考えろ、ソレはお前にとって大切にすべきものを間違えていないかを、な。」
全てを言わずともこの家庭教師にはわかったようだ。
「うん。」
綱吉もリボーンの言葉に素直に頷く。少し体が痛かった。
リボーンはベットから床に飛び降りた。
「あと二、三日はオメーの大好きな惰眠を好きなだけ貪れるんだ。疲れた体を休めるためにもさっさと寝とけ。」
そう言うと部屋から出て行こうとするのを綱吉が引きとめた。
「リボーン、あと一つ教えてほしいことがあるんだ。」
リボーンは部屋の扉の前で綱吉を振り返る。
「あと一つだけだぞ。」
「あ〜、うん、あのね……リボーンは人を……その…殺したことがあるんだよね。」
「…殺し屋だから当たり前だぞ。」
リボーンは表情には出なかったが内心少し戸惑っていた。
いつもは手に取るようにわかる綱吉の考えが今は分からなかったからだ。
「でも、それは任務だからだよね。……ちゃんと目的があってのことだよね。」
綱吉にしては珍しく真っ直ぐリボーンの目を見て聞いてくる。
「ああ、まあ個人的に気にいらないヤツも消したことはあるがな。それがどうかしたのか?」
「あ、ううん、また今度にでも話すよ。ごめん、引き止めて。」
煮え切らない綱吉の態度が気になったがその場は何も聞かず部屋を出て行った。
また1人になった部屋で綱吉は天井をジッと見ていた。いや傍からは天井を見ているように見えるが実際には何も映していなかった。
やがて暫くしてから目を瞑り大きく深呼吸をする。
そして自分がやるべき事を考え始めた。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

綱吉は奈々が持ってきたカバンに着替え等を詰め込む。
明日には退院できるようになったのだ。
精密検査も問題なしの結果が出たためだ。
退院の前日には辛うじて歩けるようになったため、まだ入院中の獄寺、ビアンキ、フゥ太、ヒバリの見舞いに回った。
獄寺はあと二日ほどで退院できると言っていたが、綱吉が見舞いに来てくれたことに感動し飛び起きようとして胸の傷口が開いた。入院期間が延びたらしい。
綱吉は見舞いに行った事を少し後悔した。
ビアンキの病室にはフゥ太がおり、どうやらビアンキに不可抗力とはいえ怪我を負わしてしまったことを謝りに来たようだった。
泣きそうなフゥ太にビアンキは微笑みながら頭を撫でてやっていた。
綱吉はビアンキのそういうところを見てやっぱりお姉さんだなぁと思う。
自分に危害さえ及ばなかったら。
「元気になってよかったな、フゥ太。」
そう言いながらフゥ太の頭を撫でてやるとフゥ太は目を潤ませて
「ツナ兄〜。」
と綱吉に抱きついてきた。ハッキリ言って筋肉痛の体に堪えた。痛い。
ビアンキとフゥ太も近々退院予定らしい。
それを聞いてビアンキの病室をあとにした。
実はヒバリの病室だけは最後まで行くかどうか迷っていた。
まだ例の事を話すのには躊躇いがある。でも見舞いには行きたい。
綱吉は行く決心をした。ヒバリと普通に過ごせるのはこれが最後になるかもしれないから。
緊張しながら病室に行ったがヒバリは案外普通に迎えてくれた。
「どうしたの?」
「あ、いえ、ただお見舞いに。」
「ふ〜ん。…いつまでも入り口にいないで座ったら。」
ヒバリに椅子を勧められおとなしく座る。
「りんご、いるかい?」
「へ?」
いきなり、りんごを勧められ間抜けな声をだしてしまう。
「だから、りんご食べるって聞いてるんだけど。」
いつものように少し呆れたような口調でヒバリは言った。
「あ、食べます。」
それを聞いてヒバリはナイフでりんごを切り始めた。
(はぁ〜、恭弥さん器用だよなぁ。)
すばやい動きでりんごを切り分けて行くヒバリに綱吉は感動さえ覚えた。自分ですると必ず指の先を切るからだ。
しかしそこでヒバリが使っているナイフに目がいった。
同時に動悸が激しくなる。あの時の感覚が蘇る。イヤだ。嫌だ。厭だ。
思わず口を押さえて俯く。
その様子に気が付いたヒバリはりんごとナイフを一旦置き綱吉に声をかける。
「綱吉、気分が悪いの?横になるかい?」
そう言って綱吉の手を握る。
すると何故か綱吉はほっと安心する。
握られた手からヒバリの体温が伝わってくる。
ゆっくりとだが動悸も治まってきた。
「あ、ありがとうございます、恭弥さん。もう大丈夫です。」
そう言いヒバリを見た。
「まだ、顔色が悪い様だけど?」
「大丈夫ですよ。体だけは丈夫なんで。」
「…そう、ならいいけど。」
ヒバリは納得がいかないような素振りだったが、綱吉がこれ以上語らない様子を見て何も言ってこなかった。
そしてりんごを食べながら話をした。
どうやらヒバリの退院は一週間後になるようだ。
病室を後にするとき、ヒバリに自分の病室まで送ると言われたがそれを丁重に断った。
綱吉は最後に笑おうとしてまた失敗した。
泣き笑いのような表情になる。
きっと次がヒバリにこうして逢える最後の機会になると思ったから。
「じゃあ、恭弥さんまた学校で。」
綱吉はヒバリの返事を聞く前に病室の扉を閉じた。
そして出来る限り早足で自分の病室に帰る。
泣きそうになるが、今はまだやることがある。すべてが終わったら。
綱吉は何故かチリチリと痛む胸を押さえた。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

「リボーン、九代目と連絡を取ってもらいたいんだけど。」
綱吉は無事退院し、自宅に帰ってきた。
奈々は綱吉の退院祝いにご馳走を作るといってチビたちを連れて買い物に行って家にはいなかった。
「…ちゃんと考えたんだな。」
リボーンの声は低かった。
「うん。」
「後悔するぞ。」
「だろうね。でもどちらにしても後悔するんだったらオレが出来るすべてのことをやってから後悔する事にしたんだ。」
綱吉は悲しそうに笑った。
「九代目を説得できると思っているのか?」
「さぁ、どうだろう。」
リボーンは舌打ちしながら携帯を取り出しボタンを押した。
そして二言三言何かを話して綱吉に放り投げた。
綱吉は携帯を少し見つめ耳に近づける。
「あ〜、Pronto.――」
躊躇いながらイタリア語で話そうとすると携帯の向こうから微かな笑いが聞こえた。
「ふふふ、未来のドンボンゴレ日本語で構わないよ。記憶を取り戻したといえど慣れ親しんでいる言葉のほうがいいと思うんだがどうだろう?」
壮年の男性の声が聞こえた。
だがその口調は柔らかいが、どことなく鋭さが紛れている。
気を抜くと飲まれそうだ。
これがイタリアでも屈指の大マフィア、ボンゴレを纏める者。
「気を使っていただきありがとうございます。お言葉に甘えて日本語で話させていただきます。」
綱吉はありがたく九代目の申し入れを受け入れた。
「で、君は私に何か用があるようだが何だろう?ああ、もしかしてトマト100年分の到着が遅れているのかな?」
(トマト100年分、本当に送ってくるの〜!!)
真剣な話をしようとしていたのに急に体の力が抜けそうになるが綱吉は気を取り直す。
「いえ、そのことではなくて。…六道骸及びその一味に関して。」
「…主要メンバー以外は前回より厳重な監獄に収容されたよ。ランチア君に関しては保護という形で信頼のおけるとあるファミリーに預かってもらっている。そして六道骸、柿本千種、城島犬、彼らは復讐者の管轄だ。余程のことが無い限り我々は手出しできない。」
「その六道骸ら三名を解放できないでしょうか?」
「…かつて知り合いだったという同情からなら止めておきなさい。それに君は知らないだろうがこれは彼らが今までやってきたことから考えると当たり前のことなんだよ。我々は手を出せない。すべては復讐者のもと裁かれる。」
九代目は淡々と応えた。そして同時にこの子は甘いと思った。
が、急に綱吉の声に鋭さが加わる。
「同情?そんなのじゃあないですよ。これはマフィアの存続に関わることだとご注進申し上げているだけですよ。ただの日本の子供の戯言と一蹴していただいても構いません。」
傍で聞いていたリボーンは驚いたように綱吉を見る。綱吉は自分のベットに腰掛、目を瞑っていた。
九代目は驚きと共に好奇心が沸く。
「ほう、では聞かせてもらおうかね。」
「簡単なことです。彼らはマフィアに憎悪を抱いている。必ず復讐者の監獄を脱獄してマフィアの殲滅に動き出すでしょう。何より骸が使うことが出来る憑依弾はマフィアにとっても脅威のはず。まあ、憑依弾が無くとも彼の能力は無視できないかと。」
「復讐者の監獄は未だかつて脱獄に成功したものはいないが。」
「今までは成功者がいなかったにしても、これからもいないとは限りません。少なくともオレ…私の知る彼らは必ず脱獄します。脱獄された場合もし彼らを運良く倒すことが出来たとしてもマフィアも無傷ではいられないと思いますよ。」 「で、君はそれを防ぐ方法があると?」
「彼らをボンゴレの名の下に復讐者の監獄から出し、私の監視下に置くことによりマフィアへ復讐する事を防ぎます。」 「確かに君には手出しが出来なかったようだが…君の先ほどの言葉を借りると、これから先も彼らが君に手出しをしないという保障は無いと思うがね。」
「その時は、私が自ら…手を。」
綱吉の手が少し震えた。
「要は六道骸らをマフィアで飼い殺しにする。ということかな?」
綱吉は九代目の言葉に目を開く。声が震えそうになるのを押さえる。
「………そう…です。」
「ふうむ。君の考えはわかったよ。最後に…もし君の案を実行するとして彼らを復讐者の監獄から出すときにボンゴレの名の下にと言っていたが、君の名前でもいいんだね。」
綱吉は揺れた。
それは事実上ボンゴレ10代目を継ぐということ。
声が掠れる。
「………は……い。」
これで―――後戻りは出来なくなった。
クラクラと眩暈にも似た感覚が襲う。
「では、リボーンに代わってくれるかい。」
綱吉は呆然としたまま何も言わずリボーンに携帯を返す。
そして頭を抱えうな垂れる。
そんな綱吉の様子を見て部屋を出てからリボーンは携帯を耳に近づける。
「リボーン、コレは君の入れ知恵かい?」
「はっ!そんなワケねーぞ。オレは交渉術なんて教えてない。」
リボーンは吐き捨てるように言った。
「そうかい…う〜ん、ギリギリ及第点ってとこだね。所々がお粗末だ。それにあそこまでストレートに物事を言ってはいけないね。自分の目的がすぐにバレてしまう。あと突発的事項には弱いようだ。まだまだ甘いね…けど攻め方は間違っていない。友達思いのいい子だ。君を家庭教師につけてよかったよ。」
「ふん、でどうするんだ?」
「どうしようねぇ。もう少し考えてみるよ。出来る限り綱吉君にはいい結果を聞かせられるといいんだけど。じゃあ、また。綱吉君を頼んだよ。」
「ああ、言われなくても俺はツナの家庭教師だからな。」
最後に受話器の向こうから微笑んだような雰囲気が伝わった。そして切れる。
部屋に戻ると部屋の主はまだうな垂れたままだった。
綱吉は自己嫌悪に陥っていた。
まだ心臓がバクバクしている。もう一度同じ事を言えといわれても無理だろう。
それだけ必死だったのだ。強気な口調もすべて自分の心を隠すためだった。
綱吉は骸を倒した。だが彼がしたかったのは骸を止めることだ。
しかし復讐者に連れて行かれるということは死と同じだという。
綱吉は決して彼らの死を願ったワケではない。
友達を救うすべが他に思いつかなかった。
だが九代目に「マフィアによる飼い殺し」と言われたときドキリとした。
彼らにとってそれは苦痛でしかないはず。
余計な事をしてしまったのかもしれない。いや、したのだろう。
しかもボンゴレとして綱吉の名が使われているのを知ったら。
どちらにせよ彼らには嫌われるであろう。
でも、それでも綱吉は彼らに生きていて欲しかった。
ただそれだけだ。
あとはもう綱吉には祈ることしかできない。祈る神など持たないのに。
まだ、泣いてはいけない。最後にやることが残っているから。
強くコブシを握る。爪が掌に食い込む感触がした。



>>11