レグルスのヒナ9

※レグルスのヒナ\※


 


「玄関でぼうっとしてないで早く入ってきたらどう?」
(…どうしてこんなことになったのだろう)


綱吉は『つな』をその胸に抱き右手にスポーツバックを持ってヒバリの家(とあるマンションだがここ一つではないらしく並盛に幾つかマンションを持っているらしい)の玄関に立ち竦む。
相変わらず『つな』は静かな寝息を立ててお休み中だ。
確かにリボーンは父親の家に泊めてもらえと言ったが雲雀がまだ父親と確定したわけではなく、況してや家に泊めてくれるわけもないと綱吉は高を括っていたのだが、意外や意外、雲雀は綱吉と『つな』が泊まる事をあっさりと了承したのだ。
それと同時にリボーンはどこからともなくスポーツバックを取り出し綱吉に渡した。
中身は綱吉の着替えが詰められていた。一体いつの間に用意したのか疑問が頭を走るがあえて問い質しはしなかった。
スポーツバックと一緒に手紙のようなものも手渡された。
聞くと困ったときに開けろとのことだ。綱吉は大人しくポケットに手紙を突っ込んだ。
そして雲雀宅へ連れて行かれたのだ。


「あ、あのオレ、つなの紙オムツ買いに――」


なんとかこの気まずさから逃げ出したい綱吉は無理やり言い訳を考える。寧ろ本当のことだからいいじゃないかと自分に言い聞かせながら。
しかし、雲雀は携帯を出して短縮ボタンを押した。


「草壁?今から紙オムツ買ってきて…うん、一袋、そう直ぐに――」
「え゛…」


雲雀は電話が終わると携帯の通話を切った。


(今のは、もしかして…)
「紙オムツは草壁に買いに行かせたから、他にいるものがあったら言って」


綱吉は何も言えるわけもなく、泣く泣く雲雀の家に上がった。
心の中では草壁に「ホントすみませ〜ん!!」と盛大に謝っていた。


「うわ〜広い」


もうそれしか出てこなかった。
室内は質素なもので必要最低限の物しか置かれて無いように思われた。
実際はその必要最低限のものだけで車一台軽く超える値段なのだが綱吉には分からない。
ただ、綱吉は身の置き場に困っていた。


「ここに座りなよ」
「あ、はい」


勧められて雲雀が座っているソファーの端にチョコンと綱吉は腰掛けた。
しかし、それを見て雲雀はまた溜め息をついた。


「君は大抵僕を見るとビクビクしているけど、僕は君を怯えさせた覚えはないんだよね。どうして?」
「え゛っ!あの応接室で始めて会ったときとか――」
「ああ、君がスリッパで僕の頭を殴った時だね」
「そ、それにお花見の時とか――」
「ああ、君がハタキで応戦してきたときだね……軽いスキンシップじゃないか」
「ええ、じゃあ、獄寺君とか山本もスキンシップ――」
「あれはムカついたから本気だよ」
(違いが分かんねぇーーーーーーー!!!)


妙な掛け合い漫才をしていると玄関のチャイムが聞こえた。
草壁が来たようだ。……紙オムツを持って。


 


「く、草壁さん、手馴れてますね」
「ああ、従兄弟の子育てを手伝ったことがあってな」


草壁は何品か離乳食を作っていた。
テーブルの上には離乳食の他に普通のご飯が並べられている。
草壁が気を利かせて雲雀と綱吉用に作ってくれたようだ。
そして家の主である雲雀は一人ソファに座って自分で入れた紅茶を飲んでいた。
綱吉は台所に立つ草壁の横に立って料理の作り方を見ていた。


「今度、作り方教えてもらってもいいですか?オレ不器用だから草壁さんのように上手くできるか分からないけど」


綱吉は目をキラキラさせて草壁にお願いしていた。


「ああ、かま…わ、ない」


草壁も了承のした。
途中で、途切れ途切れになったのはソファで紅茶をすすっている風紀委員長に「用が終わったのならさっさと帰れ」と言わんばかりの殺気の篭った視線を向けられたからだ。
その意を汲み取った草壁は帰宅の旨を伝え、雲雀宅を後にした。
草壁は本当に出来た人だ。


「じゃあ、食事にしようか?冷めるし」
「え、あ、はい」


それを聞いていたかの如く、『つな』が目を覚ました。
寧ろ丁度良かったのかもしれない。
親子水入らずでの食事となった。


「はい、つな、あ〜ん。…そういえばヒバリさんの家の場所って草壁さんには教えてたんですね」
「なに?嫉妬?」
「…なんでそうなるんですか?」


綱吉がそう返すと雲雀はつまらなそうな顔をした。
いつも雲雀の不機嫌な顔しか見ない綱吉は少し意外に思った。
『つな』はお腹一杯なのか満足顔だ。


「あの…どうして断らなかったんですか?」
「?何を?」
「オレとつながヒバリさんの家に泊まる事をです。迷惑だろうし」
「迷惑じゃないよ」
「でも、急な話でしたし…」
「群れていない君は嫌いじゃないよ。寧ろ好きなんじゃないかな?」
「は?」
「あれだよ、小動物は嫌いじゃないし、あの不思議な炎を宿している時の君とは一度戦ってみたいしね。一粒で二度美味しいってやつかな」
「えっと、あの」
「分からない?告白してるんだけど?」
「んなっ!!オレ男ですよ」
「うん、僕も男だよ。だからナニ?」


「ナニ?」と聞かれても綱吉に返せる言葉は無かった。
雲雀は妙に楽しそうに綱吉を見ている。


「で、君の返事は?」
「へ、返事〜?」


綱吉の声が裏返る。
『つな』はキョトンとした顔で綱吉を見上げていた。
(どうしたらいいんだよ!!この場合、下手に断ったら咬み殺されるんじゃ)
オロオロしだした綱吉は不意に触れたポケットにリボーンの手紙が入っていることを思い出した。
(そ、そうだよ。困ったときには読めってリボーンが――)
綱吉はゴソゴソと紙を取り出し混乱した頭のまま、文章の内容も良く理解せずそのまま棒読みした。


「ふ、ふつつかものですが、よろしくお願いいたします……………って何だこりゃぁぁああああ!!」


「わお、何だかんだ言いながら君も案外乗り気だったわけなんだ」


「ち、違っ」


「じゃあ、これからヨロシクね。綱吉」


あの雲雀にヨロシクと言われて断れるものがいるだろうか?少なくともこの並盛に住む者で平穏無事に日々を過ごしたい者なら絶対に彼には逆らわない。


「……ヨロシクお願いします」


綱吉に用意された言葉はそれしかなかった。
人生の闇に捕まったような顔をした綱吉とは対照的に『つな』は大変嬉しいそうに喜んでいた。


 


※あとがきのようなもの※
やっと一段落着きました。一応続きがあるのですが一旦終了です。


 


 


 





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