レグルスのヒナ8
※レグルスのヒナ[※
「つな、おいしい?」
「あい」
綱吉は学校に行く前に途中にあった公園のベンチに座り、『つな』にミカンジュースを飲ませてあげていた。
出かける前に奈々から渡されていたのだが、すっかり忘れていた。
ただ、すこし『つな』も休憩が必要だろうと思い、何となくあげてみたのだがどうやら喉が渇いていたようだ。そんなに大きくない容器(手の平サイズ)とはいえ、五分ぐらいの間に半分を飲んでしまった。
『つな』は満足したようで容器から口をぷはっと離した。
そのまま綱吉は『つな』の背中をポンポンと軽く叩きげっぷを促がした。
「どうやら母性本能に目覚めたようだな」
「……オレの場合は男なんだから目覚めるなら父性本能だろ」
「どっちでもいいじゃねぇか。どうせ育てるのはオメーだ」
自分から振っておいてどっちでもいいとはなんだ!と綱吉は言ってやりたかったが、いかんせん相手はリボーンだ。綱吉が敵う相手ではなかった。
「んじゃ、そろそろ学校に行くぞ」
そういうとスタスタとリボーンは歩き出す。
綱吉は『つな』を抱きかかえ渋々その後ろを着いていった。
学校に行くまでの間に『つな』は急にグズリだしたが、目的地に着く頃にはすっかり寝入ってしまっていた。
いまではスヤスヤと寝息を立てて綱吉の胸の中で眠っている。
「リボーン。つなが寝たらお兄さんに会っても父親かどうか分かんないよ」
それは暗にもう家に帰らないかという意味だったのだが、リボーンは「大した問題じゃねぇ」と綱吉の訴えを退けた。
校門から校庭そしてクラブ棟へ向かう。途中何人か生徒(部活にきていたのだろう)とすれ違い、その度に不審な目で見られた。
当たり前だ。綱吉の前を歩くのは黒のスーツに身を包みスタスタと危なげなく歩く赤ん坊らしくない赤ん坊。一方綱の胸の中でスヤスヤと寝ている赤ん坊は抱いている本人に良く似ている。一体赤ん坊二人も連れて休日の学校に何をしにきたのだと言わんばかりの視線が綱吉を攻撃して来た。
その攻撃を交わしながら綱吉はクラブ棟へ急いだ。
しかし、そんな時後ろから声がかかる。
「わお、学校に赤ん坊を連れてきている生徒が居るって聞いたんだけど、やっぱり君か」
「ひ、ひばりさん」
驚きのあまり声が裏返る。
綱吉はすっかり忘れていたのだ。並中の秩序、雲雀恭弥の存在を。
ゆっくりと首だけ後ろを見るとやはり並中の風紀委員長様が立っていた。
「赤ん坊と聞いたから、てっきり君の家庭教師のことだと思ってたんだけど」
「え?リボーンもいますよ……っていないし!!」
綱吉の前を歩いていたはずのリボーンの姿は跡形も無く消えていた。
(マズイ!このままじゃ咬み殺されちゃうよ)
視線を雲雀に戻すと雲雀はゆっくりと綱吉に近づき『つな』を覗きこむ。
「ふ〜ん。君そっくりだね」
「そ、そうですか?」
「君が小さくなったのかと思ったよ」
(そんなワケないじゃん!!)
綱吉は突っ込みを入れそうになったが、天下の雲雀恭弥に強くでれるわけもなく、心の中に留めた。
相変わらず『つな』を覗き込んでいる雲雀に綱吉はどぎまぎしてしまう。
(か、顔、近いんですけど。……うわぁ〜、ヒバリさんの睫毛って長い。髪もサラサラっぽいし)
綱吉がマジマジとヒバリの顔を見ていると、次の瞬間ペロリと鼻の頭を舐められた。
「ひゃっ!な、なな」
左手で鼻を押さえて綱吉は声にならない声をだす。
「ぼうっとしている君が悪い」
「へ?あ、すみません」
「……君は変わった子だね。どうしてあやまるのさ?」
「え、いや、そのオレが悪いのかなぁって」
雲雀は呆れたように溜め息を一つついた。
次の言葉を雲雀が発しようとした時、急に極限元気な人の声が響いた。
「おう、沢田に雲雀ではないか!どうしたこんなところで。休日にわざわざ学校に来るということは…さてはやっとボクシング部に入る決心を――」
「違います!!」
「勝手に話を進めないでくれる」
「ふむ、中々息の合ったコンビネーションだな」
ほぼ同時に綱吉と雲雀は了平に突っ込みを入れたのだが、当の了平自身は妙に納得して頷きながら返事を返した。
「で、雲雀は風紀委員の仕事があるとして、沢田はどうして学校にいるのだ?」
「え゛…それは、その――」
「赤ん坊の父親探しだぞ」
綱吉が言い淀んでいると近くの木の上からリボーンの声がした。
案の定、リボーンが華麗な身のこなしで上から降りてきた。
「その赤ん坊は十年後のツナの子どもで、どうやら守護者の誰かが父親らしいんだぞ。で、現在父親を探している真っ最中だ。ちなみにイベント名は『守護者対抗父親争奪戦綱吉杯』だぞ」
「へぇ、じゃあ、全員倒したら沢田とその子どもは僕のモノってことだね」
「え゛、違っ―ってどこからトンファー出したんですか!!」
「ふむ、なるほど。良く分からんが勝てばいいのだな」
「だから、違うって、リボーンも言ってよ!!」
「ちなみに、アホ牛、獄寺、山本は失格済みだ」
(そうじゃないだろぉぉおがぁああああ!!)
「ふぇ、ふぇええええ」
綱吉が盛大に心の中で叫んだと同時に『つな』が泣き始めた。
あまりの騒がしさに起きてしまったようだ。
しかし、ここまでしてやっと起きるだなんて将来が不安だと綱吉は思った。
「うわ!ご、ごめん!煩かったよな」
そういいながら背中を撫でてあげるが泣き止む気配が無い。
その泣き声に興が削がれたのか雲雀が綱吉の近くに寄ってきた。
「日陰に行ってあやした方がいいんじゃないの」
「あ、そうしてみます」
雲雀が日陰に促がしてくれた。その間に了平は邪魔なようなのでボクシング部へ帰ると言って部活に戻っていった。
少し泣くのが治まってきたのか『つな』は綱吉を見上げ、次に隣にいた雲雀に視線を送る。
すると『つな』は小さな手を伸ばしてしっかりと雲雀の制服を掴んだ。
「こら、つな離しな――」
「ふぇ〜babbo、babbo」
(…ちょっとマテ……今、なんて)
しかし、『つな』はそのまま再度寝に入ってしまった。
綱吉は慌てたが『つな』を無理やり起こすわけにもいかず一人オロオロする。
「ふっ、見つかったな」
「いや、今のは寝ぼけて――」
「でも最初に言っただろうが、つなに父親と呼ばれたもんが勝ちだ」
何故か楽しそうにリボーンは言った。
その言葉に雲雀がピクリと反応する。
「どういうこと?沢田」
雲雀が綱吉に聞いてくるが、綱吉は返事を返せない。
(もし本当にヒバリさんが父親なら十年でオレとヒバリさんの間に一体何があったんだよ!!)
リボーンはどこから取り出したのか守護者の名前の書かれた紙の笹川了平の名にバツを
そして雲雀恭弥の名に大きなマルを入れた。
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