十年後に行ってきました2

「それにしても…これは、また小さくなりましたね。」

四歳の姿になった綱吉を―でも中身は十年前の綱吉だ―見ながら骸は呟く。
ヒバリは重たい溜め息をついた。
綱吉当人に至っては未だ呆然としていた。
十年前に帰れるはずが何故か四歳児になって、しかも帰れないと来たら綱吉でなくてもかなりのショックだろう。
少なくとも自分はイヤだ。二人はそう思っていた。

「恐らく、十年前の世界ではこっちの綱吉が若返ってるんだろうね。」
「そうですね。」

それは言外にまた、向こうで綱吉が何かやったのだろうという予想も含まれていた。
今までヒバリと骸が同席した場合、互いが牽制し合い場の空気が殺気立たないことなど無かった。こうして会話が成り立つことも珍しい。
が、今回ばかりはそんな場合ではない。

相変わらず綱吉は呆然としていたが、いつまでもあのままではマズイだろう。
ヒバリは綱吉に近づき声を掛けながら綱吉の脇の下に手を入れ抱き上げた。

「とりあえず、部屋を移ろう。」
「…部屋を?…どこに?」
まだ呆けた様に綱吉は力なく聞いた。
「では、僕の―。」
「黙れ。」

骸の申し入れはヒバリによって呆気なく拒否された。
かと言って適当な空き部屋に連れて行ったとしても、骸に連れ去られる可能性がある。
少し逡巡したあと、仕方なく自分の部屋に連れて行くことにした。

問題はその道中に誰かに、今の綱吉を見咎められることだ。
……その時はその時に考えよう。
急に面倒臭くなり、さっさと考えるのを諦めヒバリは綱吉を抱っこしたまま綱吉の執務室を後にした。
骸が何も言わず後ろを着いてきた。

しかし、やはりボンゴレ本部は人が多かった。
ヒバリが抱いている子供もそうだが、何より顔を合わせれば死人が出る、とまで言われた雲と霧の守護者が二人並んで歩いているのだ。
目立って仕方が無い。
だが、彼らに話しかけられるツワモノはいなかった。
ヒバリが抱いている子供の事は気になるが、誰だって命は惜しい。

「電波、ちょっと離れたら。」
「アヒル君が綱吉君をこちらへ渡していただけるなら、いつでも離れて差し上げますよ。」
(……うぅ、こ、怖いよ〜。)

静かに牽制しあっている二人の会話が、全て聞こえている綱吉は本気で怯えた。


そんな中ヒバリの部下らしい人物が近づいてきて、ヒバリに仕事に関して報告してきた。ある意味勇者だ。
「―――以上です。…………それで…その御子はもしや…。」

報告が終わると男はチラリと綱吉に目をやる。
綱吉はバレタのかと思いビクッと体を震わせた。
ヒバリは一瞬不機嫌そうにしたが、何か思いついたのか少し意地悪そうな笑みを作り言った。

「言わなくても分かるでしょ。」

綱吉には分からない。
骸はその意味が分かったのか面白そうに笑っていた。
男はヒバリの答えを聞いて、驚きと喜びが入り混じったような表情をした。

「で、では、やはり!ボスに良く似た御子だとは思っておりましたが。」
(そりゃ、本人なんだから似てると思うけど…何がやはりなんだ??)

「ボスがこの事を黙ってたのは御子がある程度、成長するまで待っておられたのですね。皆にも急ぎ伝えましょう。待望の後継者が、十一代目候補の事を。」

そう矢継ぎ早に言うと男は目の前から素早く消えていた。
綱吉は呆然としながらヒバリに聞いた。

「…キョーヤさん。」
「なに?」
あくまでもヒバリは平然としていた。

「今の人、十一代目とか言ってなかった?」
「言ってたね。」
「もしかしてオレの事じゃないですよね?」
「もしかしなくても君の事だと思うよ。」

綱吉は慌てる。あのまま勘違いした彼から話が広まったら大変なことになる。

「なっ!!止めなくていいんですか?あの人、絶対勘違いしてますよ!」
「僕は『言わなくても分かるだろう』と言っただけだよ。勝手に勘違いしたのはあっち。それにコレはお仕置きでもあるんだよ。」
「…お仕置き?誰への…ですか?」

嫌な予感がする。

「勿論、十年後の君に。君は精々、十年後にお仕置きされないよう頑張りなよ。」
(〜〜っ!十年後のオレ、恭弥さんにここまでやらすなんて、何やってんだよ!!!)

骸はやはり面白そうに笑っていた。




後書きみたいなもの

ツナとヒバリとムックの三人を書くのは楽でいいのですが
絶対にムックが出張ってくるので抑えるのが疲れる。


>>3