十年前に行ってきました1

「あっれ〜、もう5分以上たったよね?」

ハハハと乾いた笑みを浮かべながらそう言ってみるが、誰もいないので問いに関する答えは返ってこなかった。
「やっぱり、オレが悪いのかなぁ。」
さして悪びれた様子もなく呟く声はどこまでも軽かった。


綱吉が見覚えのある煙にまかれ次に見えたのは懐かしい10年前の自分の部屋だった。
階段を騒がしく下って行く音がするから、恐らくランボがイーピンとふざけていた時に十年前の自分にバズーカを誤射した。といったところだろう。
綱吉は懐かしくなって部屋をゆっくりと見渡す。
するとランボが置いて行ったと思われるバズーカが、無造作に部屋のドア付近に転がっていた。
ここで好奇心を見せたのがいけなかった。

(そういえば、このバズーカの中ってどうなってるんだろう?)

バズーカをゆっくりした動作で手に持ってみる。
(別にチョットぐらい見させてもらってもいいよな。それにしてもコレどうやって開けるんだろう?)
綱吉はバズーカの接続部分の隙間に爪を入れ、ゲームセンターの景品のカプセルを割る要領で開けられないか試してみたがまったく開く様子は無かった。

「お、おのれ中々やるなバズーカの癖に。」

バズーカに言っても仕方の無いことをいいながら両手首をクネクネっと回す。
綱吉は止めておけばいいものをムキになり、再度挑戦しようと隙間に爪を入れ力を込めた瞬間 指がすべり
コン、ガシャン
バズーカが落ちイヤな音がした。
綱吉の背中を嫌な汗が伝う。

「あー、あー、まぁ大丈夫だよね。ランボだってあのモジャモジャの髪の中に入れて持ち運んでんだし。落としたくらいじゃ壊れないって。あははは……」
誰にともなく言い訳をしてみたが、残念ながらただ時間が過ぎていくのみだった。

そして冒頭に戻る。

しかし、いつまでもこうしている訳にもいかず、仕方なく部屋をでて階段を下る。
先ほどまではランボとイーピンの声が響いていたが、二人とも近所に遊びに出かけたのか見当たらない。

(それにしても母さんにリボーン、ビアンキ、フゥ太まで居ないなんて珍しい。)

慌てた様子もなくボンヤリとそんなことを考えながら、受話器を手に取り長い番号を押す。
やがて懐かしい若い時の彼の声が受話器の向こうから聞こえた。

「えっ?日本にいるの?丁度良かった――――。」

やがてニ、三話し終えると静かに受話器を置いた。

(これで多分何とかなると思うけど…何か忘れてるよなぁ?)

うんうんと考えてみるが直ぐに諦めた。この十年間で綱吉は諦めることだけは、異常に早くなっていた。

これからどうしようかな?
余った時間をどうするか考えながら部屋に戻る。
十年前では考えられないくらい暢気な自分に少し可笑しくなる。
そしてこちらに来たときに履いていた靴を取り玄関に向かった。

どうせなら久しぶりに並盛を散歩しよう。

思い立ったが吉日。
綱吉は玄関でいそいそと靴に履き替え自宅を後にしたのだった。

◇◇◇

ぶらぶらと商店街を歩く。
学校帰りの学生が、ゲームセンターやら雑貨屋などに立ち寄る姿がちらほらと見受けられた。
だが、出来れば知り合いにはなるべく会いたくない。

特に―――――――――――――――――恭弥さんには。

自分が現在喧嘩中なのは十年後のヒバリなのだが今、十年前のヒバリに会ったとしてもどんな顔をしていいのか分からない。
今となっては喧嘩の原因すらも思い出せないが、もどかしさだけが綱吉の中に会った。

会いたくない。会わなければ良いのに。―――――――――はぁ。
実に複雑だ。

そんな事を考えながらハッキリと前も見ずに歩いていると、高校生ぐらいの三人組みの男に肩がぶつかった。

「ああ?」
「あ、すみません。」

綱吉はとりあえず謝りそのまま立ち去ろうとしたのだが、ぶつかった相手はそれが気に入らなかったらしい。

「てめぇ、人の肩にぶつかっておいて謝るだけで済むと思ってるのか?」
「思ってます。」

綱吉は相手の顔も見ずにキッパリ答えた。
それに驚いたのはぶつかった不良達のほうだ。
見た目はおっとりしている綱吉だ。少し脅せば恐怖のあまり動かなくなると踏んでいたのだがその予想はあっさり覆された。
不良達は立ち去ろうとする綱吉を無理やり引き止める。

「ちょ、ちょっと待ちやがれ!」
「何ですか?」

不良たちは面倒臭そうに振り返る綱吉を引き止め、商店街の通りの陰に連れ込む。
綱吉の顔は怯えなどではなく酷く迷惑そうにした。

「あのなぁ、この状況なら馬鹿でも分かるだろう?」

不良の一人が綱吉の顔の直ぐ横をコブシで殴る。耳元で風を切る音が聞こえた。
少し綱吉の髪が少し揺れた。
当たれば確かにそれなりのダメージになるだろう。当たればの話だが。

「俺たちも穏便にコトを済ましたいんだよ。だからチョットばかし俺たちに募金の協力をしてくれたら見逃してやってもいいんだぜ。」

要は『殴られたくなかったら金寄こせ』ということだ。
かつあげの常套句に綱吉は悩むような仕草の後、ニッコリと微笑みさらりと言った。

「Mi dispiace dirglielo ma la nostra collaborazione e impossibile.」

(あいにくですが、協力しかねます。)

不良たちは何を言われたか分からず動きを止める。
(大抵の日本人って日本語以外の言語を聞くと固まるんだよねぇ。)
その様子を見て綱吉は不良たちを睥睨した。
だが、それは彼らのプライドを大変傷つけたらしく、綱吉の正面に立つ不良の表情は見る間に険悪なモノと化していた。

「こ、この野郎、何だよその目は!!」
「バカにしてるに決まっているでしょう。」

逆上した不良が殴りかかろうとしたが、そのコブシが綱吉に届くことはなかった。
第三者の声と共に彼が崩れ落ちたからだ。
残りの二人は何が起こったか分からず呆然とした。
しかし綱吉だけは不良を伸したであろう人物に目をやり、溜め息を付きながら俯き片手で顔を覆う。
そこには綱吉が、ヒバリとは違う意味で会いたくなかったフルーティーな髪型の人物が立っていた。

ようやく自分達の仲間がやられた事を理解したのか、残った二人が後ろを振り向きながら叫ぶ。
「ひ、ヒキョウだぞ!背後から攻撃するなんて!」
「おやおや、では三人で一人を襲うのはヒキョウでは無いのですか?」
「くっ!」

自分達の事を棚に上げてほざく不良にバカにした様な声で骸が言った。
(おお、骸が珍しく至極真っ当な事を言っている。)
綱吉は妙なところで感心した。

骸の言葉が大変気に入らなかったらしく、不良は骸と綱吉に襲い掛かってきた。
一瞬、心配そうな顔で骸がこっちを見てきたので、大丈夫の意味を込めてうっすらと笑みを返した。
それは万人をうっとりとさせる笑みだったのだけど綱吉本人には自覚が無い。
骸は嬉しそうに頬を染め、にこやかに不良と対峙した。






後書きみたいなもの

ネーミングセンスの無さは許してください(泣)
ちなみに大抵の観光地にある『○○に(へ)行って来ました』
という名前のお菓子からです。
仮で付けたはずなのに…。

同時進行で『十年後に行って来ました』を連載してます。
一応、話的にはリンクしてます。(のはず) よろしかったら、そちらも読んであげてください。
両方、人物関係は『夢名残の空』と一緒です。
出来ましたら最後までお付き合いください。


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